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文学少女と科学少年42 ページ42

どうやら雷はすぐそこだったらしく避雷針を立てる時間も無かったため金狼の槍をコハクが取り、立てた。

「ククク、降りてきたぜ電気の神が___」

千空...とても楽しそうなのは良いのだが隣の金狼がどうも可哀想で仕方がない。
必要だったとはいえ、横で見たこともないくらいに落ち込んだ顔をしている金狼に私は視線を向けられない。

何故かこちらが申し訳なくなってくる。

しかし何はともあれ電気、もとい強力磁石をゲットしたのだ。

これはとても大きな収穫であると同時に、あさぎりゲンもこちら側に気持ちを揺るがす意志が少し見えたような気もした。

「すまないが許せ金狼。非常事態だったものでな」

口ではちゃんと謝罪するコハクだが果たしてそこに気持ちはこもっているのだろうか...終いには銀狼までも煽りまくるものだから金狼は怒って下山してしまった。

先程まで笑っていたのが嘘みたいに私の心は沈んでいた。

あぁ、ごめんね金狼。

「ゴイスー落ち込んでるね〜金狼ちゃん」
『そうなんだよね...申し訳ない』

私達もこれから作るあるものの為に科学王国に戻り始めているとゲンがひょこっと隣に来た。

「なんでAちゃんがそんな顔すんの?関係ないじゃん〜?」

全ては千空ちゃんの科学のために必要なことなんでしょ、なんて言ってまた薄っぺらい言葉を私にかけてくるゲンに私は確かに、と納得してしまう。

ゲンは気にするな、と遠回しに行っているのか。
はたまた、ただ単に勝手に落ち込んでいる私を不思議に思ったのか。

でもやはり、私が思うことは変わらなかった。

『理由はどうであれ、大切なものを奪われるのは嫌でしょ?私は、嫌だ』

脳裏に光の失ったあの情熱のたぎった赤い瞳がよぎる。
千空を一度はこの世界から無くしてしまった私にとって、対象は違えどそれを簡単に奪ってしまうのはどうだろうかと考えてしまうのだ。

やはり私は、あの時が相当トラウマになっているらしい。

「...優しいのね、Aちゃんは」

ゲンは飄々としていたけれどその顔にはどこか陰りがあるように見えた。
そりゃゲンだって人間だもの。

感情の一つや二つは出てもおかしくない。

でもなんだか、ゲンの今の表情は。
私に対しての、少しの苛立ち?

ゲンは私に怒っているように見えた。

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作者名:うらら | 作成日時:2023年3月18日 20時

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