文学少女と科学少年41 ページ41
「鉄の棒に雷落として、ハイパワー磁石を科学の力で自作すんだよ！！」
文字通りの、電光石火。
そうと決まればこの雷が収まる前に速攻で作らなければいけない。
容易いことでは無いがやる価値はある。
銅を溶かし、村から借りてきたウルシを鉄棒に塗りたくり村の橋の板を一枚だけ剥がしそこに溝を掘ることで銅線を作り、その銅線を鉄棒に巻き付ける。
よし...いけるぞ！このままスムーズにいけば...！
「ヤベー！マグマだ！」
「話の通じる男ではない。闘いは避けられんぞ...！！」
今ここで村と闘いなんて始めれば発電のチャンスを逃すだけじゃない、村の人達との溝も深まり科学王国の仲間にするのはもっと不可能になる。
するとゲンがスイカから花束を受け取りマグマの元へと向かう。
何を考えているのかはさっぱりだが時間を稼いでくれているのなら思う存分使わしてもらおう。
「戦争より、花でしょ」
そう言いながらマグマたちを妖術、と怪しむ村人の心を利用してあっという間に騙してしまった。
...バックパームって言うやつだっけ、あれ。
マジックも、この世界じゃ妖術の一種なのかもな。
そうこうしている間に完成し、皆ではげ山と呼ばれる山(というか岩)を登る。
あまりにも足場が無さすぎて登るのに精一杯になっていると、後ろから金狼が支えてくれた。
何故、よりも感謝の気持ちを伝えた方がいいかな、と思い『ありがとう』とだけ言うとそっぽを向かれてしまった。
あれ、うそ、怒らせた？
いやいや、私感謝しただけだよ、ね？
「礼には及ばん。お前たちを監視するためでもあるからな」
「またまたぁ〜女の子支えたいだけだったりしい"った！？何すんのさぁ！？」
「銀狼貴様...！いい加減黙っていろ！」
こんな一刻を争う場面でも構わず喧嘩する二人を見て思わず吹き出してしまった。
なんだか、どうしようもないくらいにおかしかった。
石化してこんなに笑ったのは初めてかもしれない。
なんて、呑気に考えていると呆然と金狼と銀狼が私のことを見ていた。
「...笑うのだな」
『私だって笑うよ？...でもそうだな、こんなに笑ったのは久しぶりかも』
喧嘩で笑う、なんておかしな話だけれど。
でも言葉には表せられない気持ちが心から湧いてきて私を笑わせる。
そんなふうに思っていれば
「だ、ダメだ！この槍だけは」
という金狼の悲痛の叫びが聞こえた。
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作者名：うらら | 作成日時：2023年3月18日 20時
