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文学少女と科学少年39 ページ39

千空がゲンに何やらカマをかけているのを横目に私はゲンを観察する。
服装は全体的にダボッとしている、中に何か入っているのは確定だな。それが刃物だと仮定して...武力がどれだけゲンに備わっているのかは分からないが背丈からしてあまり強い方では無いのだろう。

ただ...ミジンコパワーの千空なら一発KOだ。

「___知ってんだろ、千空ちゃん」

っ!名前を知ってる、これで司の仲間は確定した。
瞬時にコハクが刃を構える。

「待てバカ。あさぎりゲンテメー、100億%カマかけに気付いててなんで急にアッサリ司の仲間だって認めた?」

「情勢が変わったんだよ。こいつを見たからね」

ゲンの目線の先には製鉄炉……千空の科学がそこにはあった。
ゲンは紙より薄っぺらい男だ。でも、この千空の科学愛の前では誰もかなわないんだろう。





ゲンは司帝国直々のスパイだ。私達が本当に死んだかどうかの偵察に来たらしい。司の手で確実に殺したのを彼自身がよく知ってるはずなのに...隙が無さすぎて最早人間とは思えなくなってしまう。

「千空ちゃんもそうなんだけどさ、Aちゃんのこと司ちゃんがずっと気にしてたのよ。もしAちゃんも科学に強い女の子だったら...って」

「ほら、千空ちゃんとずっと一緒に居るらしいじゃない?そりゃそんな考えが浮かぶことも分かるわけよ」

...私が、科学に。
実際私は科学に千空ほど詳しくもないが確かに千空から長年聞き続けてきた科学は大方頭に入っている。

盲点だ。
まさかここで私が見つかったことによる不利が発生するなんて。

『千空、ごめ__』
「あー分かった分かった。そんな顔されたらたまったもんじゃねえ。顔上げやがれ」

両手で私の顔を挟み、無理やり千空に顔を上げさせられる。まさかの返答に思わず放心してしまう。
何でこうも、この男は。

どこまでもお人好しな男だ。全く。

そういうところが、私は好きなんだ。
文学に私が嘘はつけないように、この気持ちにも嘘はつけない。

「まあそんな悲しい顔せずともさ、俺は嘘の報告をするだけ。『千空は死んだ』『Aちゃんも科学はなんも分かってないポンコツな女の子』これで千空ちゃん達は助かる」

そうしてくれるのが一番有難いし、全て解決される。...のだがはたしてゲンはそう言ってくれるのか。
...多分それは、千空の科学の力にかかってるんだと思う。


現に今勝ち馬に乗る、とゲンが豪語しているから。

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作者名:うらら | 作成日時:2023年3月18日 20時

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