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文学少女と科学少年36 ページ36

『ありがとう、千空』

わざと理由は言わない。千空なら分かってくれるだろう。
人の見た目や文化がどれだけ変わっても、本質は変わらない。
昔読んだ文学にあったフレーズが頭をよぎる。

私は手に持った猫じゃらしラーメンを恐る恐るすする。


『う、ぁ...ねっとりしてるな...これ』

「もとが猫じゃらしだからな...」

まあ想像はしていたけれども。
猫じゃらしラーメンなんて旧現代のどこを探しても食べてる人なんて居なかったし。

猫じゃらしと小麦じゃ全然違うし。

...でも旧現代人にとっては不味くても、皆とても美味しそうに食べている。

『"文学と科学はパンと水のようなものである"』

「どこぞの文学おっさんの言葉なんだ、A先生」

『トルストイ、19世紀のロシアを代表する文豪でね。政治や社会にも大きな影響を与えたの。その中の一つの言葉』

千空はまだ話し足りないといった私の表情を読み取ったのかそれとも千空自身が知りたいからなのか続きを聞いてくる。


『パンだけでも確かに食べれる。咀嚼する口と、空腹さえあればね。でも水__文学が無いとパンを食べる時だって喉が渇くし深く味わうことも出来ない。
科学は文学が無くても成り立つけどそれ以上を目指すのなら文学は必要不可欠...そんな科学と文学の関係がとても素敵だと思ったんだ』


コハクやクロム、そしてスイカも。
科学と文学の合わさった猫じゃらしラーメンでこんなにも笑顔になれる。

旧現代の料理人さんは、こういう笑顔が大好きなんだね。

今なら痛いほど分かる。
私もこの笑顔は大好きだ、とても。

「ククク、いい笑顔してんじゃねえか」

『でしょでしょ。皆とっても美味しそう』

千空の口からその言葉が出れば、私も満足だ。
すると不意に肩に重みを感じた。見てみれば案の定と言うべきか千空の手が置かれていた。

「唆るじゃねえか科学と文学のその例え。心底お前らしいわ」


千空は私の目を見てそう言うと、皆にラーメンを食べさせるために屋台作りに取り掛かった。
私らしい、か。千空、貴方はいつも私を見てくれている。

とても嬉しい。

...しかし、私はこの気持ちをやはり封印すべきなようだ。
千空にとって私は助手、パンが千空だとしたら私は水。

これ以上にも、これ以下にもなれないのだから。

やるせない気持ちがあっても今はそうするしかないのだと悟る。
千空が水である私を好きなわけないのだ。

そう、絶対に。

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作者名:うらら | 作成日時:2023年3月18日 20時

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