文学少女と科学少年35 ページ35
コハク達に猫じゃらしを採ってきてもらってる間に脱穀用のなるべく平らな石を見つけてくる。
この石で猫じゃらしを叩けば多少の脱穀はできる。
その後だ。うまいこと粉まで作れればいいのだが...少しの分量や潰し方によっては一筋縄では行かないことがある。
職人の技はなくても知識は腐るほどある。
下準備を一人で黙々としていればコハク達が帰ってきて猫じゃらしが大量に出てくる。
これだけあれば充分、あとはひたすらトライ＆エラーあるのみ。
「まさかとは思うがこの猫じゃらしを食べるのか？ハ！私は遠慮しておこう」
『大丈夫...と言いたいところだけれど私達も猫じゃらしでは食べた事ないかなぁ...はは』
「猫じゃらしは100億%！立派な穀物だ。粟のご先祖様だな」
千空の言葉に多少は味変わるもだけれど、と補足しておく。コハク達にとっては今までにない味だろうが私達にとっては悪い方の今までにない味になる。
小麦粉に慣れた肥えすぎた舌では美味しいとは感じないだろう。
トライ＆エラー。なるべく食べれるとこまでひたすら試す。美味しいと思って貰えるように。
ふと思い立つ。
トライ＆エラー、なんてまさに千空の愛してる科学のようじゃないか。
そう思うとなんだか千空と共通点が出来たみたいで嬉しくなる。
そうか、色んな場所に科学ってあるんだな。とっても素敵だ。
『で...出来たっ！！』
「俺らはな、3700年前、このクッッソ旨い科学の飯を拉麺。そう呼んでいた」
小麦粉...ならぬ猫じゃらし粉が完成してからここまで。
季節はもう、私が起きてから4ヶ月の夏になっていて日差しが眩しかった。
...にしても、食べたとしても旧現代のラーメンより旨くないとは言えほぼ原型に近いこの香りと見た目はダメだ。今にでも喉から手が出るほど欲しくなる。
とりあえず、何よりもクロム達の感想が大事なため一人ずつ取り分けて渡す。
最初は毒味役としてクロム。
「...うめえええええ！ラーメンヤベー！！」
感極まってズルズルとラーメンをすする姿は旧現代の様子となんら変わらなかった。
その様子に場違いにも感動していると目の前に私の分の猫じゃらしラーメンが差し出される。
反射的に受け取ると千空があのいつものように優しい目で私を見ていた。
「食べてみろよ。A先生の料理の記念すべき第一号だ」
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作者名：うらら | 作成日時：2023年3月18日 20時
