文学少女と科学少年4 ページ4
「聞いてくれ千空、A!!俺は決めた!今日こそ今から!!この五年越しの想いを杠に伝える!!」
高校生になりすっかりデカくなった大樹が思いっきり科学部の戸を開ける。
記録をとっていた私は驚愕のあまりペンを落っことしてしまった。
ついにか、という思いと同時にやはり相当な想いを募らせていたんだなという覚悟もヒシヒシと感じてくる。
「ほーーん。そりゃすげえ興味深い深い。声帯がブチ切れるほど応援してるわ、この科学部室から」
応援のおの字もない表情をしながら適当にあしらってるような姿は本当に友達なのかと怪しくなる。
まぁ、大方、実験の途中に割り込まれて興味より実験の方が勝ってしまったのだろうだけど。
おまけに惚れ薬とは、しかも惚れ薬とは名ばかりのガソリンを手渡そうとするのだからやはり友達かどうか怪しくなる。
机の椅子から立ち上がり、大樹の背中をポンッと叩く。
『大樹なら出来るよ、頑張れ』
「おぉ!!ありがとうな、A!!」
同じように背中をバシバシ叩かれてお礼を言われる。
あ、やばい、大樹の力強すぎて……吐く
ただ、これも全部純粋な善意なのだ。
にこやかに科学室を出ていった大樹を見てあぁ、ついにかと思う。
何故こんなにも純粋に恋というものにぶつけられるのか、答えは簡単で"そういう人間"だからだ。
人は元から持った性質と、育ちながら身につく性質の二つがある。
でも大樹はそのどちらも純粋なのだ。
それが時に私を苦しめる。
太陽みたいな人が、私はどうにも苦手意識を抱いてしまうらしい。
もちろん大樹は大切な数少ない友達だ。
ボーッと考え込んでいたらいつの間にかガソリンに火をつけた千空が実験の続きを始めようとしていた。
慌てて記録を取り直しながらも再び考え込む。
千空は、恋愛事とは全くの無縁だ。
私の文学の恋愛事とかだって、適当に流される。
本人にとってはとことん不合理的なこととして片付けられているんだろう。
そう思うと、胸がチクリと痛む。
「あ?おいA。手、止まってんぞ」
『あー……ごめん。ちょっと最近集中できないことが多くて』
「なんだ、悩み事か?俺に話してみろ」
千空が実験を放り出して私の前にしゃがみこむ。
……こういう所だ、この男の引力が強い所は。だから私はこの男に頭が上がらない。
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作者名:うらら | 作成日時:2023年3月18日 20時