文学少女と科学少年29 ページ29
モンハンは知らなかった、でも昔話は知っている。
『その桃太郎って、誰から聞いたの？』
「おぅAも知ってんのか桃太郎。お話好きとか言ってたもんな」
「ルリ姉がいっぱいお話してくれたんだよ！」
ルリ姉って、コハクのお姉さんで村の巫女様だ。そんな人が一体なぜこの話を知っているのだろう。
そもそも何故桃太郎？他の昔話はあるのだろうか。
「桃太郎に出てくんじゃねえかゴリラ」
『出てこないけど！？』
「落ち着きやがれA」
クロムから桃太郎の物語の全貌を聞いて思わず大きな声を出してしまう。桃太郎にゴリラ、ライオン、熊が出てくるなど聞いたことも無い。
そもそも、何でそんな危険な動物を...
危険な動物？
もしかして、危険な動物をあえて学ばせる為に頭に入りやすい物語で登場させた？そうだとしたらこの謎の集落がここまで続いたのも納得が行く。
とりあえずルリという人物の謎が益々深まった。
恐らく、ルリはこの村のことを全て知っている。それを突き止めるためにも、ルリの命を救う為にも、一刻も早く万能薬を作りたい...！
「ククク、俄然そのルリって女に興味が湧いてきやがった。こうなりゃなおさら意地でも万能薬作って助けねえとなァ」
千空も大体考えてる事は一緒のようだ。
ただ、その言い方だと何だかルリに好意を持ってるようで少しドキリとした。
千空の方に1mmたりともそんな感情は無いと分かっていても、だとしても百歩、いや千歩譲って3700年前は普通に思春期の少年だったのだ。
そういう事が、もしかしたら、もしかしたらだけどあるかもしれない。
その相手は...私じゃないかもしれない。
「！？なんだルリに興味って。どういう意味だ千空」
「あ？」
クロムの言葉に私も耳を澄ませる、今の反応は...好意的な意味じゃないという事でいいんだよね、ね！？
安心したのもつかの間、千空と私の耳元でコハクが衝撃の事実を打ち明ける。
...まさかクロムがルリに好意を抱いていたとは。
『そっちのパターンかぁ...』
驚きと安心に満ちた独り言が疲れた体と共にぐったり出ていく。
「これでクロムもなかなかお子ちゃまでな。無自覚なのがなかなか尊い」
「おう何の話だクッソ誰がお子ちゃまだ！」
でも、いつの時代も恋って同じなんだね。何だかクロムに親近感湧いちゃったかもしれない。
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作者名：うらら | 作成日時：2023年3月18日 20時
