文学少女と科学少年26 ページ26
「ククク...消されてねぇよバカ。まるっと残ってんじゃねえか」
「どこにだよ！？」
「んな簡単に人類が負けっかよ」
千空は自身の頭を指指して、クロムを窘めるように、冷静に、それでいて力強く訴える。
彼はとてつもなく合理的だ。
だけどそれ以上に、不合理的なほどお優しい。
「人類の200万年は今全部、俺のここにある」
「そしてAのここにも、テメーのここにもだ。違うのかよ...！！」
私の頭を優しく撫で、クロムの方に拳を向ける。
...どうにも、私は千空に頭を撫でてもらうと心の底から安心しきってしまう。
何故だかは分からない。...否、分かってない訳では無い。今は必要ない事だからだ。
抑えなければ、そう。
この世界の謎が分かるまでは＿＿＿。
「俺も一緒に科学の国を興す。ヤッベーほど効きまくる薬作ってよ、ルリの病気ぶっ倒してやるぜ！！」
私も力強く頷いて同調の意志を見せる。
ルリという少女を救うために。
「教えてくれ千空！A！万能薬の作り方をよ。ルリの病気ぶっ倒してやるぜ！！」
「姉者が治るなら！どんな協力でもするぞ！」
『あー...千空？ちょっと一人だけゲスい顔してない？』
翌朝、万能薬作りにクロム、コハクが加わって人手も増えたのだけど。
きっと千空は村全員分の力が欲しいんだろう。手に取るように分かってしまうのは長年千空の隣に居るからか、それともただ単に彼が合理性を求めすぎた結果なのか...。
どちらもだな、これは。
とはいえ、私は万能薬の作り方は大方知っていても詳しい説明はクロムとコハク同様、なんにも分からないので千空から長々と説明を受ける。
「死ぬほど根気と人手が居るが＿＿100億%必ず万能薬に辿り着ける」
そう言って書くものがない地面に私が千空に指示されたロードマップを素早く木で書いていく。
あぁ、久しぶりの感覚だ。手がスルスルと動く。
やはり私はこうでなくっちゃ。
『っふぅ、こんなもんかな』
酷く長くなってしまったロードマップを見て気が遠くなる。出来るだけ簡潔に書いたけど分かりやすくなるほど道のりの遠さが分かるなこれ...。
一体どれくらいの時間と人手がいるんだろ。
ロードマップを見たコハクとクロムも驚いているのか思わず凄い声が出ていた。
気が遠くなるのも無理は無い...けど
やりたくないとも、思わない。
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作者名：うらら | 作成日時：2023年3月18日 20時
