文学少女と科学少年21 ページ21
「＿＿君は！女を護った紳士の妖術使い。生きてたのか⋯⋯！！」
妖術⋯使い？
少しばかり違和感はあれど先に救出が先だと考えたのか千空が謎の少女に問う。
「夕方まで粘れるか？もう限界ならちょい残しの火薬で一か八かブチ飛ばす。だが粘れるなら死ぬほど時間かかるが100億%助けてやる！！」
「テメー本人じゃなきゃ分からねえ二択なんだ！ソッコーで決めろ！どっちだ！？」
切羽詰まった様子でまくし立てる千空にしばらく呆然と見つめていただけだった少女は青い目をこちらに真っ直ぐ向けて力強く返事をした。
「ああ、内蔵も骨も無事だ！粘れる！」
その返事を聞いた瞬間、反射的に千空が持っていた荷物から様々なものを取り出し、作業を始める。こんな大きな木を持ち上げられる方法はこの道具を見る限り一つだ。
私もソッコーで千空の手伝いをしながら少女の様子も見る。今のところ体に異常は無し。
それにしても不思議な外見をしている。ハーフだろうか、青い瞳に綺麗な金髪。目を引かれる容姿。
一体、どこで何が起こっているのか気になる。
そうこうしているうちに完成し、千空が木の上へと登っていく。
「現代じゃ小学校で習うがな。発明は紀元前数百年、アルキメデスのおっさんだ。一高校生のゴミみてえな力を司も大樹も真っ青な怪力に変換する」
『＿＿＿＿滑車⋯！』
千空が木の上から飛び降りると同時に徐々に倒れていた木が持ち上がっていく。
その様子を見てひどく感心したように彼女は千空に声をかけた。
「⋯素晴らしい。いや、そのアルキなんとかの知恵がじゃない。君のその、一歩一歩問題解決へと楔を打ち続ける、揺るがぬ信念がだよ」
フワッとようやく年相応の笑顔が見れたような気がしたその顔に、女の私もおもわず見惚れる。
ただ、次の言葉に大きく衝撃を受けることになる。
「私の名はコハク。どうやら私は君のことがめっぽう好きになってしまったようだ」
⋯今、今なんて⋯言ったのコハクという少女は。
惚れた？はれた？え⋯惚れた！？
『そ、それって、あの、だから、さ。恋愛的な⋯って⋯事だよね？』
「な！そんな話は微塵もしてない！君たちという人間を気に入ったから協力しようと言ってるんだ！！」
コハクが誤解を解くように必死に弁解する。なんだ、良かった⋯。
なんだ良かった⋯？
私、コハクに嫉妬してたのかな。
なんだか⋯申し訳ない
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作者名：うらら | 作成日時：2023年3月18日 20時
