文学少女と科学少年3 ページ3
とうとう中学三年生になってしまった。
私と千空の関係は相変わらずで。
強いて言えばクラスが離れてしまったことくらい。
千空の居ないクラスには価値が見いだせず、また文学本を読み漁る日々に戻りつつある。
もちろん、友達くらいは居るが広く浅くの為、一人になろうと思えばいつでもなれた。なので何不自由なく学校生活は過ごせている。
そして一つ分かったことがある。
大樹が杠に恋心を抱いたという事実が千空の口により明らかになった。
前々からそうだろうなとは思ってはいたがあまりにも純粋無垢の少年なもので恋心と言ってもほんの少し頬を赤らめるくらいの可愛らしいものだった。
だからといって私たちが大樹に口を挟むわけでもなく、ただ見守っていた。
100％純粋な気持ちで見守っていたかは別として。
高校も、全員志望校が一緒というミラクルを起こして喜んではいるが内心私は胸の内がモヤモヤしていた。
恋は楽しい。
恋をしたことがない私でも、文学を読んで恋をした気になれるほど、恋とは繊細な言葉で表現されている。
だからとてつもないほどの羨ましさが私を襲う。
大樹は雑頭。
でも杠の前になると頑張ってカッコよく見せようとする。
そんな姿が、視線が、表情が
全部、私の奥深くに突き刺さる。
別に大樹に恋心を抱いていた訳では無い、自分の恋愛感情くらい気づくことは出来る。
ただ何となく、ほんとに何となく
そう思うようになってから私と千空たちとの間には距離があった気がする。
いや、千空はそんな距離でさえ関係ないとでも言うように踏み込んでくるのだけれど。
取引は今後千空が死ぬまで。
そして、私が死ぬまで。
一生涯の契約なんて、きっと守れるわけが無いと思う人がいてもおかしくないこの取引はきっと彼が科学に対して嘘が付けないと分かっているから続いているものである。
でも、そんな取引さえなければ千空が話しかけてくることはほぼない。
するとしても必要最低限だけ。
それが酷く虚しく
酷く私の心をモヤモヤさせる。
人間、失格。
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作者名：うらら | 作成日時：2023年3月18日 20時
