そこにあるのは必然【Dr.STONE】 (ページ17)

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文学少女と科学少年17 ページ17

きっと相当悩んで出した結論なんだろう。千空の額には汗が滲んでいる。

私たちは燃えるものをじゃんじゃん集めて入れていく。

「火薬が尽きちまう、燃えるもんじゃんじゃんブチ込め！」

「待ってろ木を集めてくるぞー！！」

大樹のその声を合図に一斉に分かれて木を集めに行く。杠が温泉の近くで集めているため、私はその逆方向で採取しようと思い、急いで普段使わない筋肉を根こそぎ使って走った。

急がなきゃ、千空は自分の命を賭けている。

本当は分かっているのだ。今、司は近くまで来ていることも。

霊長類最強と謳われた男なら、この差だって直ぐに埋まるはずだ。
それを千空は鑑みて賭けている...。

どちらが先か。

私たちはそれに貢献しなければいけない。

必死に尽くさなければいけない。

千空が居ない世界に

存在価値など、人類が助かる道など

無いのだから。

・

・

『千、空...？』

持っていた枝が腕からこぼれ落ちる。
大きくなった音に、目の前に現れている司にバレたらどうしようなどと微塵も考える余裕が無い。

な、んで。

人間は、危ないリスクの方が高いと分かっていても本能でリスクがない確率が低い方を信じてしまうらしい。

ああ、なるほどな。

私や千空は賭けに負けたのか。

岩陰に身を潜めながらも震える。杠を人質に取られこちらからは攻撃が何も出来ない状態だ。

早く、何か、打開策を。

千空だったらどう考える？今まで私は千空とともにどんな知識を得て、それを記録してきた。

考えろ考えろ考えろ考えろ！！

「千空、もしも俺たちが3700年前に出会っていたら...初めての友達になれたのかもしれない」

「かもな」

圧倒的な武力の差に。ただ漠然と絶望した。
よく小説で間に割り込み助けるようなスーパーヒーローは居るが、これはそういう次元では無かった。

直感的に感じる。

無理だ、司に武力でなんて勝てない。

でも、だとしても

私はやはりまだ平和ボケをしているようだった。

まだ、千空が生きている可能性を信じているのだから＿＿

フラリと倒れていく大好きな人に大樹と杠、そして私が手を伸ばす。

司に姿を見られたって構わない。もうそんな余裕は無い。

今はただ

『ねぇ...ねぇってば...千空...千空っ！！！』

その光のない瞳に何度も何度も呼びかけることしか出来なかった。