そこにあるのは必然【Dr.STONE】 (ページ15)

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文学少女と科学少年15 ページ15

稀に見るすごく幸せそうな顔で千空が硫黄を集めていく。

私も千空から斧を受け取り、千空の隣で硫黄を集める。あまり体力は無いが力はある方だ。

まだ温泉に入っている大樹と杠を遠目に眺める。何やら大事な話をしているようだ。...それもそうか。

だって、石化する前に大樹は杠に五年越しの想いを伝えようとしていたのだ。だが今は状態が状態、そんな呑気に恋だの愛だの言ってる場合では無いことを大樹や杠が考えてないわけが無い。

『千空、なんで私を起こしたの？』

ふと疑問に思っていたことが口から出る。

「あー？んなもんAなら少し考えりゃ分かるだろ」

『いや、分かる、けど。でも...あのタイミングじゃなくて良かったでしょ？例えば...石化した私を土に埋めて人質にされないようにする、とか』

千空にとって私は"実験の記録に欠かせない国語力のある奴"だ。だが、この世界では紙も、ペンも。作る優先順位はまだ低い。

あのタイミングで起こすのには違和感でしかないんだ。あの合理的でしか動かない千空が、なぜ。

千空はめんどくさいものを見るように採取していた手を止めてこちらに向き直る。...なんだなんだ、私はまだこの気持ちを忘れた訳では無い。本当に心臓に悪い男だ。

「ほんとに人の気持ちには疎いのな。アホほどめんどくせえわ。単純にお前が必要だからに決まってんだろ」

『必要...って。だからその理由を＿＿』

「テメーのその何にでも理由をつけたがんのやめろ、てか俺がAを必要としてる以上に大きな理由があるかよ」

私の目を見て...真っ直ぐそう言う千空は

もうすっかり日が沈みキラキラと宝石のように輝く満点の星空と重なってすごく綺麗に見える。

月も、綺麗だ。

初めて見た。こんなに綺麗な星空は。

いや違う。いくら東京とはいえ旅行などで満点の星空は見た事がある。ただこれはそういうのではなくて

石神千空という私の人生を大きく左右してきたこの人物が居るからこそ

より輝く星空だ。

私は強ばっていた頬を緩めて心底高揚する。あぁ、馬鹿らしいな。思えば深く考える必要はなかったのだ。

今度は私が千空の目を真っ直ぐ見て伝える。

『私を必要としてくれて...ありがとう』

何故なら石神千空という男は、そういう奴だから。