文学少女と科学少年12 ページ12
結局、その後は大樹が出血して倒れたことで一時休戦となった。
司が完全に居なくなったことを確認して慌てて大樹の元へ駆け寄る。
『私本当に隠れててよかったの？』
「あ？見つかって人質にされたら元も子もねえだろうが。頭のキレるお前が思いつかないわけねえだろ」
千空にまだ寝ぼけてやがんのか、と一言いわれて先程のクロスボウの矢を拾う。何も言えない。実際そうなのかもしれないし。
でも、ただ役に立てなかったことに焦りを感じたのかもしれない。このまま起こしてもらったのに足でまといになるのだけは嫌なんだ。
「...クロスボウの時速200km超えてんだぞ」
「とってたね、パシって...」
「だから文明を進めるしかねえ。司を止める手はもうたった一つだ」
たった一つ...この四人でできること...なるほど。これでもたくさん千空の科学については聞いてきたつもりだ。
そこまで理科に詳しくない私でも分かった。
「銃、つまり＿＿＿＿火薬を作る！！」
確か、石器時代が200万年前で、火薬の発明はごく最近で西暦700年頃。
「ククク、つまり俺らはこれから199万8700年の文明を一っっ気にワープするわけだ。唆るぜこれは！！」
彼にとってはこの上ないほど唆るものなんだろう。手に取るように分かる。私も、目覚めたばかりのこの世界にとてつもなく興味を抱いているのだから。
青い空、緑の森、茶色い砂、赤い太陽。
全ての自然がここにある。こんなファンタジーを幻想と呼ばずなんと呼ぶのか。まるで本の中に飛び込んだみたいだった。
文学と科学。悲しいほど真反対なものだが、相性が悪いという訳では無い。使い方さえ工夫すれば、最強のタッグになる。
「俺とお前の、取引。忘れたとは言わせねえ。これから一生涯の取引だ。契約破棄なんざ今更認めないからな」
『破棄する気なんてないよ。この世界のこと、自分の手で、目で、耳で、体で、残したいって思った』
だってこんなにも綺麗なんだから。
とりあえず急いで逃げた痕跡を残す為に科学室と呼ばれていた部屋の中の器具を片っ端から壊していく。
勿体ないと思うのが半分、これを今まで千空と大樹のたった二人でという感心。
「本当に、二人は頑張ってたんだね。私達も頑張ろう！」
『うん、もちろんだよ』
杠とも決意を固めていざ出発する。
ゴールの箱根に
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作者名：うらら | 作成日時：2023年3月18日 20時
