ヒロイン8 ページ9
沈黙が流れる。
あー、こういう時蘭なら凄くいい言葉をすぐ思いついて、夏油を励まして、笑顔にしちゃうんだろうな。
なんて言えばいいか、私には見当もつかない。
ただ単にコミュ力無いだけかもしれないけど。
まあ、でもこれだけは言えるか。
『蘭って、そういうの気にする子じゃ無いでしょ。女神級の優しさだし』
「女神、なんて。本当そうだね。蘭は私の女神みたいなものだ」
謝る決心が着いたのか、合わせる顔が出来たのか、あるいは両方か、夏油は立ち上がりいつもの歩幅より少し早歩きの状態で部屋から出る。
「Aも行こう」
私はその言葉には返事をせず、黙って夏油の後ろを着いていく。
「...蘭も優しいが、Aも負けじと優しいと思うよ、私は」
『何それ、初めて言われた。蘭より優しい子なんて居ると思う?』
慰めのつもり?という恨めしさも込めて前を歩く夏油を静かに睨むと私の心を読むかのように夏油は続けた。
「慰めなんかじゃないさ。優しさにだって種類はあるって話だよ。蘭の優しさとAの優しさ。どちらも見た目や中身は違えど同じ"優しさ"」
『例えば?』
「ふむ、例えば...かい?例えば...蘭が天使の優しさだとしたら、Aは悪魔の優しさ、とかかな」
夏油の例えになっていない答えに私は頭が混乱する。あれ、夏油ってこんなしっちゃかめっちゃかな言葉を言うやつだったか?
夏油は前を向いて、私の方をちらりとも見ないのに。
_____全て見られてるみたい
夏油は、少し怖い。
『悪魔...ねぇ。言い得て妙ってやつ?』
「納得はするんだね」
『まあ、天使では無いし』
夏油がおもむろに私の方に振り向く。
その細い目は、さらに細められてジッとこちらを見据えてきた。体に穴が開くくらい、見られる。
夏油の考えが分からない。だから少し怖い。
蘭の事が好きなはずなのに、そんな素振りを見せなかったり。五条と蘭の距離が近くても全くと言っていいほど気にしなかったり。
普通は嫉妬するものじゃないのか。少しくらいは。
だから時々、夏油が本当に蘭の事が好きなのか怪しくなってくる。いや、でもやっぱり多分好きなのだろう。
「さぁ、ついた」
『声が聞こえる。良かった、結構元気そう』
そして私も、思ってもないことを口にする。
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ホワホワ - めっちゃ面白いです!更新待ってます!! (3月23日 15時) (レス) @page37 id: d16746353f (このIDを非表示/違反報告)
あやなみ。(プロフ) - うららさん» 初めまして、面白くて最高すぎて涙が出そうです💝、あのうららさんと会話したくてボードで会話するのは平気でしょうか?これからも応援してます (3月21日 20時) (レス) id: 861062e758 (このIDを非表示/違反報告)
nachu(プロフ) - 待ってましたあぁぁ!!次の更新も楽しみに待ってます❤️ (3月17日 21時) (レス) @page37 id: d62d5ed77b (このIDを非表示/違反報告)
LuNa(プロフ) - 更新きたぁぁぁぁ"!もうすぐ読みました!来た瞬間ヤッホーイですよ!😭本当に最高でした!…本当に大好きです!更新本当にゆっくりでいいんで、頑張ってください!!!無理しないでくださいね!!更新ありがとうございます!🎉 (3月17日 21時) (レス) id: de0c19e396 (このIDを非表示/違反報告)
うらら(プロフ) - 櫻田たるとさん» 更新本当に遅くなって申し訳ございません🙇🏻♀️🙇♀️🙇🏼♀️ゆっくりになるとは思いますが必ず完結させます!! (3月17日 19時) (レス) id: 95fb161e69 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:うらら | 作成日時:2023年9月24日 16時