ヒロイン7 ページ8
「蘭!!」
五条が椅子から立ち上がり、目線を私から蘭に変える。
蘭はまだおぼつかない意識の中、悟の名前を天使のようなかぼそい声で呼び続けた。
まるでその視界には、私が入っていないみたいに。
「さと...る。こわ、かった。死、んだかと思ったの」
それだけ言うとそのクリクリの目から大きな粒の涙を流す。
悟は顔を歪ませ、ただ蘭の手を力強く握る。
「俺が守る、俺が...」
まるで画面の中の恋愛ドラマでも見ている気分だ。
私は視聴者の一人に過ぎなくて、主人公は画面の中。
途方もない距離。
物理的にも、精神的にも。
「A、硝子と傑に知らせろ」
『あ...うん』
______久しぶりに名前呼ばれた
なんて、心底くだらないか。優先順位が違うんだから。
私は医務室を出て硝子と夏油の寮の部屋へと向かう。
別に携帯で知らせれば良かった話だけど、何となくこれ以上はあそこに居ると息が出来ない気がした。
硝子の部屋の扉を叩く。起きてるのか定かではなかったが、案外直ぐに扉が開いた。
『硝子、蘭が...』
"蘭"という言葉を聞いた瞬間、目を見開いてそのままダッシュして医務室に向かう。
ホッとしてた。硝子のあの様子だと、寝れてなかったんだろう。ホントに、クールに見えて硝子は優しい。
とりあえず硝子があの調子だと夏油も寝れてないんだろうと思い夏油の部屋へ急ぐ。
今度は扉を何回叩いても夏油は出てこなかった。
寝てるのか、と思い部屋を後にしようとしたら扉が開いて中から夏油がこんにちはして来た。
「ちょっと、いいかい?」
苦笑いを浮かべる夏油の顔は、ひどく真っ青。
『うん、いいよ』
私も、多分真っ青。
夏油の部屋はいつも思うけど綺麗だ。ソファに案内されてゆっくりと二人で腰をかける。
「いや、要件は分かっているんだ。蘭が目を覚ましたのだろう?でも私は、手放しでは喜べない」
『もしかして、一緒に任務行ったのに助けられなかったことまだ気にしてる?』
大正解、と力無く言った夏油は深いため息をついたあと俯いた。
「合わせる顔が、無いね」
『そ...か』
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ホワホワ - めっちゃ面白いです!更新待ってます!! (3月23日 15時) (レス) @page37 id: d16746353f (このIDを非表示/違反報告)
あやなみ。(プロフ) - うららさん» 初めまして、面白くて最高すぎて涙が出そうです💝、あのうららさんと会話したくてボードで会話するのは平気でしょうか?これからも応援してます (3月21日 20時) (レス) id: 861062e758 (このIDを非表示/違反報告)
nachu(プロフ) - 待ってましたあぁぁ!!次の更新も楽しみに待ってます❤️ (3月17日 21時) (レス) @page37 id: d62d5ed77b (このIDを非表示/違反報告)
LuNa(プロフ) - 更新きたぁぁぁぁ"!もうすぐ読みました!来た瞬間ヤッホーイですよ!😭本当に最高でした!…本当に大好きです!更新本当にゆっくりでいいんで、頑張ってください!!!無理しないでくださいね!!更新ありがとうございます!🎉 (3月17日 21時) (レス) id: de0c19e396 (このIDを非表示/違反報告)
うらら(プロフ) - 櫻田たるとさん» 更新本当に遅くなって申し訳ございません🙇🏻♀️🙇♀️🙇🏼♀️ゆっくりになるとは思いますが必ず完結させます!! (3月17日 19時) (レス) id: 95fb161e69 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:うらら | 作成日時:2023年9月24日 16時