ヒロインは二人も要らないのです【呪術廻戦】

ヒロイン26 ページ28

息を飲んで待つ。


五条が喋るまで私はいくらでも待つ。


告白するに至る経緯と、その気持ち、覚悟＿＿＿＿

私は知る権利がある、と思いたい。

「別に、ただやるなら"今"だと思っただけ」

ああバカだなコイツ。私がお前の嘘を見抜けないとでも思ってんのかよ。

でもそっか。

"告白"という行為はただの通過点にしか過ぎなくて。

五条や夏油にとっても蘭が幸せになればそれでいいと口では言いつつもやはり欲張りな一人の人間で。

蘭の隣は俺が、私がいい。


＿＿＿＿私も、一人の人間だから思うよ

五条の隣は、私がいい。

夏油はそういうことだから、と一言残して蘭の元へとビーチバレーボールをしに行った。

残ったのは私と五条だから、その間にはただただ気まずい沈黙が流れるだけ。

ごめんなさいね、こんな時明るく切り出せる蘭じゃなくて。

心の中で嫌味いっぱいの文句を言うと五条がおもむろに私の水着を指さした。


「お前、海入んねえの」

『海……ああ、海ね。五条こそ入らないの？』


質問を質問で返したからか、少し不機嫌そうな顔になった五条にやべ、と思いながらもこれくらい許してくれよと何食わぬ顔で五条を見つめた。

しばらくため息をつくと五条はポツリと言葉をこぼし始めた。


「俺は……謝ろうと思って。この間、俺多分気が動転してたんだわ。Aに告るとか、おかしいよな。悪ぃ」


おか、しい。

おかしい？

私に"告白"する行為はおかしいの？

そんなことで謝られて私はどう反応すればいいんだろう。

＿＿＿＿全然いいよ

何も良くない。なんなら五条の頬に一発お見舞いしてやりたい。

＿＿＿＿おかしいって何

そのまんまの意味じゃない？私に告るなんて天地がひっくり返っても有り得ないって、自分が一番分かってる。


＿＿＿＿本当は、手違いでも告白してくれて嬉しかったんじゃないの？

そんなんじゃ……そ、んなんじゃ

ないよね？



頭の中でグルグルと気持ち悪い何かが回る。

五条の方を見れずにぐるぐる回る。

慌てて立ち上がり海の方へと走る。そうだ、気分転換に海でも入ろう。なんて馬鹿な考え。


＿＿＿私、泳げないくせに

トラウマで。フラッシュバックする。

面白そうに溺れる私を動画に収める母と父。もっと溺れさせようとする姉。

家族が家族じゃない、"怪物"みたいな姿。


『ごほっ……だ、だれ、か！！』

混乱した頭はさらに混乱を呼ぶ。

最後に見たのは




何だったんだろう。

夏油傑の心情1→←五条悟の心情 1

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す