ヒロイン16 ページ17
蘭の声じゃないと思った。
いつもの子鳥のさえずりでも聞こえるんじゃないかってくらい心地よい高さの声も、今は跡形もなかった。
『ぇ』
掠れた声しか出ない私を、色の無い真っ黒の目で見る蘭は、嘘をついてる様には見えなかった。
何で、と声が出る前に五条が蘭を呼ぶ声が聞こえた。
「おーい!蘭!お前の好きなチーズケーキあるってよー」
「チーズケーキ!?食べる食べる〜!」
顔色をパッと変えた蘭は私の方なんてチラリと見向きもせず五条の方へ駆け寄って行く。
先程までは天使のようだと思っていた蘭の笑顔は、恐怖以外の何物でもなかった。
私は、動けなかった。
目を、耳を、疑った。
ありえない。そんなこと、ありえない。考えれば考えるほど、悪い方向ばかりに考えが行く。
そんな考えの行く末は、私の背中をポンッと叩いた夏油によって遮られることになった。
「顔色が悪いが...本当に大丈夫なのかい?」
『え、あ...。うん。大丈夫。きっと...大丈夫なんじゃないかな』
「どうしてそんなに他人行儀なんだい?自分の事じゃないか」
『それは...だって』
____言ってどうする?
でも言った方がいいんじゃ。蘭が怖い。怖いから、夏油を頼ってみるのもいいんじゃないのか。
_____信じると思う?
自信は、無い。夏油も五条も、硝子も灰原も七海もみんなが蘭の事が大好きなのは百も承知。
____じゃあ、しまっておかなきゃね
しまって...おく?
そっか。私が我慢すればいい話なんだ。それ、ナイスアイデアだね。
『ううん、何でも。それより肉まん食べたーい』
私は夏油の顔を見ずに硝子の元へ向かう。
これでいい。これが最善策。だってどうせ言ったって信じないし、その結果私が嫌われるだけだもん。
居場所がこれ以上なくなるのは...もう勘弁。
蘭の事は苦手でも、それだとしても、確かにここは"好き"で。
好きな人達から嫌われることほど、怖いものはないって、充分...充分知ってるし。
酒のツマミコーナーで柿ピーを買おうとしている硝子を見つけ、またまた飛び込む。
「うお、どしたよ。あんた今日甘えたさんだね」
『そういう日もあるってことで!』
例え、私が負荷を背負うことになっても、みんなの生活に支障が出ないならそれでいい。
それが、いい。
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ホワホワ - めっちゃ面白いです!更新待ってます!! (3月23日 15時) (レス) @page37 id: d16746353f (このIDを非表示/違反報告)
あやなみ。(プロフ) - うららさん» 初めまして、面白くて最高すぎて涙が出そうです💝、あのうららさんと会話したくてボードで会話するのは平気でしょうか?これからも応援してます (3月21日 20時) (レス) id: 861062e758 (このIDを非表示/違反報告)
nachu(プロフ) - 待ってましたあぁぁ!!次の更新も楽しみに待ってます❤️ (3月17日 21時) (レス) @page37 id: d62d5ed77b (このIDを非表示/違反報告)
LuNa(プロフ) - 更新きたぁぁぁぁ"!もうすぐ読みました!来た瞬間ヤッホーイですよ!😭本当に最高でした!…本当に大好きです!更新本当にゆっくりでいいんで、頑張ってください!!!無理しないでくださいね!!更新ありがとうございます!🎉 (3月17日 21時) (レス) id: de0c19e396 (このIDを非表示/違反報告)
うらら(プロフ) - 櫻田たるとさん» 更新本当に遅くなって申し訳ございません🙇🏻♀️🙇♀️🙇🏼♀️ゆっくりになるとは思いますが必ず完結させます!! (3月17日 19時) (レス) id: 95fb161e69 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:うらら | 作成日時:2023年9月24日 16時