嗚呼、神様。 (ページ4)

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1.少年ページ4

【太宰】
「全く、どうしたら死ねるのだろう。」

昼の心地いい日差しを浴び、私は川に浮かんでいた。

あまりにいい天気が続くので、入水の頻度が増しているのは仕方がない。

「今日もダメかー。」

目を閉じて呟き、このあと飛んでくるであろう同僚の叱責を想像して気分が台無しになった。

(でももうちょっと・・・。)

そう思った刹那、グイッと何かに引っ張られる。

岸まで引きずられるような感覚に、溜息をついて目を開けた。

そこには、美少年がいた。

華奢で色白という一種の病的な雰囲気すら醸し出す美貌だが、どこか瞳は濁っている。

だが、すぐに興味を失った。

(国木田くんじゃないだけマシだけどさ・・・。)

そう思って口を開く。

「君だね、私の入水の邪魔をしたのは。」

若干睨みつけて言うと、少年は一瞬キョトンとしてすぐに笑い出した。

『あっはははははは！あんた、莫迦なんだね！』

疑問符すらつけない確信した響きに、ムッとして言い返す。

「なんだい、君は。人の邪魔をした挙句莫迦にして笑うなんて。」

少年は未だにケラケラと笑っている。

『だって、自分から命を捨てるなんて！頭、フフ、おかしいでしょ、あはは！』

「私には君の方が気が狂って見えるけどね。」

ジトりとした目で見ると、やっと笑い止んで、
人形のような美しい微笑みで此方を見ながら口を開いた。

『自分の命を捨てることは許されない。』

小さい子に言い聞かせるような喋り方に再度反論しようとすると、間髪入れずに話し出す。

『だって、神様はそれを望まないから。』

始終穏やかで透き通ったアルトの声で喋る少年を見つめていたが、その一言で私は自分の身体に鳥肌が立っていることに気がつく。

もし、と少年が続ける。

『もしどうしても死にたいんだったら、』

作り物染みた人間らしさの欠片も無い笑顔で、

『_________。』

その表情は確かに、

先程までの愛らしい少年のものでは無かった。

*

*

*

『もしどうしても死にたいんだったら、』

*

『俺が、殺してあげるよ。』