十、悔しい ページ13
七番が取ろうとしていたのは、光のピアスだった。
交通安全のお守りモチーフの、…少しダサいピアス。
それを受け取った光は二っと明るい笑顔を浮かべた。
光「いい怪異だっているよな！決めた！やっぱオレはお前を祓わねぇ！」
それはダメだよ…と、早く会話を制して置けばよかったと後で後悔した。
七番の気配が一気に変わる。
花「ねェ少年、一体どんな理由があれば…人を殺しても許されるんだと思う」
そう静かに呟いた七番は光を押し倒した。
『光！』
私は霊刀を構えて光を庇う。
花「今、俺が、ここで2人を殺しても、何か…すごく特別な理由があれば、許されるかな？」
目が正気じゃない。
包丁を私たちに向けてくる七番からは、狂気を感じた。これまでにないほど禍々しい狂気を。
輝「そこまでだ」
嫌なほど聞き飽きた力強い声が、鼓膜をくすぐる。
目の前に閃光が走って、その眩しさに目がくらむ。
七番を見つめるクズ男の目には、確かな殺気と憎悪が宿っていた。
何度か祓い屋の仕事で一緒になっている私は見慣れているが、光は初めてコイツのこの目を見るらしく、わかりやすく戸惑っていた。
いつも優しい笑顔を浮かべていたはずの兄が、裏で妖にこんな目を向けていたなんて…まあ、思わないだろうな。
輝「どうだった？僕の言ったことは正しかっただろ」
祓おうとする兄。
守ろうとする弟。
反抗する光をクズ男は数珠で拘束した。
光「！輝兄っ」
輝「光はまだまだ未熟なんだから…余計なことは何も考えなくていいんだよ」
動けなくなった光の代わりに、私が七番とクズ男の間に入る。
霊刀を構える。
影から残火が飛び出す。
するとクズ男は容赦なく残火に霊刀を突き刺した。
全ての光景がスローモーションのようにゆっくり流れた。
輝「…あまり、邪魔しないでくれないかな」
『残火っ！！』
電撃はながらせていないが、動きを封じる呪いをかけられたみたいで残火はぐったりとその場に転がった。
『貴様…っ』
クズ男に向き直った瞬間残火に気を取られていた私の懐に、一気にクズ男は入り込んできた。
輝「大丈夫、殺しはしないよ」
そう腹立つような笑みを浮かべたクズ男の蹴りが私の鳩尾に決まる。
『……っ！』
飛びそうな意識を舌を噛んで何とか保った。
だがしかし、すぐに起き上がることはできず抵抗できない自分が虚しかった。
怪異相手なら術やらなんやらで対処できるが、生身の人間相手だとやはり男は女に負ける。
悔しい。
終わり
ログインすれば
この作者の新作が読める(完全無料)
←九、綺麗だ
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 72人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
翼 - 続きが気になります！更新、楽しみにしてます！ (2021年4月18日 12時) (
レス) id: e6efe56fc6 (このIDを非表示/違反報告)
ルル - 面白いです！！更新頑張ってください！！ (2020年3月14日 12時) (レス) id: 8704b5e388 (このIDを非表示/違反報告)
イツキ(プロフ) - 若葉さん» 独り言みたいだからですか？ (2020年3月13日 22時) (レス) id: d483986195 (このIDを非表示/違反報告)
イツキ(プロフ) - 花っち�擦気�» ありがとうございます！！頑張ります！！ (2020年3月13日 22時) (レス) id: d483986195 (このIDを非表示/違反報告)
若葉 - なんか、狐と夢主ちゃんのお会話シーンみんなにとって厨二とおもったのは、私だけですか? (2020年3月13日 22時) (レス) id: 4dface175c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：イツキ | 作成日時：2020年1月25日 20時
