同居人が顔面の良さと色気爆走させてる【赤井秀一】続編

16 ページ16

「わたし...この家を出ようと思うんです」



期待してた自分が恥ずかしい。




「そうですか...
それは申し訳ないです」



寂しがってくれるんじゃないか、とか
引き止めてくれるんじゃないか、とか





「幼馴染の男の子の家に、暫くお世話になります」




安室さんの時みたいに
怒ってくれるんじゃないのかな？とか





「....わかりました」




あの日の事は、全部嘘だよ。とか


もしかしたら言ってくれるんじゃないかって。





「....話はそれだけですか？」





第三者だったら
きっと、殴ってる。






「.....私、昴さんのことが分からない」



「....と言うと？」




どうしてそんなに他人みたいな態度取れるの？







「私...バカみたい

　自分の都合のいいように妄想してるのもバカだし
　これで胸を痛めてるのもバカみたい」





「....そうですか」





「私はあなたと違って...
全部初めてだったから」



「....Aさん」




「...っ、」



昴さんは私の頭をそっと撫でた。





「大丈夫、

　 大丈夫ですよ。


　時間が経ったら全部大丈夫になりますから。

　きっといつか全て、解決しますから」





昴さんは呪文のように何度も何度も繰り返した。





「....あなたがかける言葉じゃないですよね」



「...大丈夫です。
　今だけ、我慢してください」




やっぱり馬鹿だ。


側から見ればクズな言動をしているこの男に


優しい言葉をかけられ

優しく頭を撫でられ


胸がホッとしている自分がいる。




けどそれは一時の幸せで



やっぱり昴さんの言葉の意味は分からなかった。



今この瞬間がつらくて
初めての失恋があまりにも辛かったから



まだ経験が浅かった私には
あなたを大好きな私とお別れできるその時までの時間が

気が遠くなるほど長く感じた。



私が彼を好きで

彼も私を好きなのに


なんで私たちはなんの関係にもならなかったの？




その答えを追求すれば



私の知らない誰かの存在が

顔もわからない誰かの存在が


ふと頭によぎって。




その痛みは、病のように
中々治らなかった。





.

.

.

けれど結論から言うと
彼の言葉は少しだけ当たっていた。






「うぉ、何だこれすっげぇ美味いぞ！
　Aってこんな料理美味かったっけ？」



「フフ...。一緒に住んでた人が料理うまくてさ
　それを真似して見たんだ。

　いつも見てたからさ、」

17→←15

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す