愛してる【皐月葵】 ページ31
※イメージ曲は鏡音リン『繰り返し一粒』
“愛してる”
そう言ったのは、嘘ですか?
「はあ・・・・」
大学の人目につかない校舎裏
錆び付いたベンチに腰かけて、空を見てからため息を吐いた。
「葵?大丈夫?」
「A・・・・、大丈夫だよ」
どこからともなく現れて、俺の首に腕を回した彼女にはもう慣れて、驚かないようになった。
恋人になった始めの頃は、これだけで赤面してたのにね
「はい、水分ちゃんと取ってね」
「うん」
彼女から水を渡されるとき見えた、手首についた赤い跡。
チラリと首を見ると、隠しきれていない、独占欲の華が咲いている。
それを見る度に、分かっているのに泣きたくなって、俺じゃダメなの?って聞いてしまいたくなる。
でも、勇気のない俺にそんなこと出来ないから
「わっ、どうしたの?」
彼女の腰を引き寄せて、寄りかかるように抱きついた。
「・・・・ちょっと、このまま」
この甘い幻想が、続けば良いのに。
それでも、
プルルルルル──────
「あ、ごめん、でなきゃ。そのまま講義行くね」
「・・・・うん」
電話1つで居なくなる彼女の背中を見えなくなるまで見送った。
あの電話が男からだって知ってるのに
彼女が他の男とナニをしてるのかも知ってるのに
別れることが出来なくて。
まだ大丈夫って思い込んでる自分がいて。
信じてたんだ、本気で
疑うなんて嫌で。
この事を聞いたら、離れていってしまうような気がしたんだ。
だから俺は
「────愛してるよ、A」
誰も居ないところで、彼女への愛を呟くだけ。
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水無月のぞみ - 悲恋とかbadend嫌いです。 (2021年12月11日 18時) (レス) id: 90a3a483bc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぱなぱな | 作成日時:2019年5月21日 14時