巡り会う妖と人の子１２

第５３２話〜親になったねずみ男と羽叶〜 ページ29

そして相変わらず赤ん坊を抱えているねずみ男に向かって半ば強制感を交えつつ言った

鬼太郎｢それまでお前が子守をしてくれ、ねずみ男｣

ねずみ｢えええ！？｣

文句有りげな叫びに猫娘が猫顔で詰め寄る

猫娘｢しっっかりやらないと引っ掻くからね！｣

ねずみ｢やれるもんならやってみな！｣

ヘッと鼻で笑いながら赤ん坊を眼前まで押し付けると猫娘も爪を納めて引き下がった

ねずみ｢ちぇっ！なんで俺が…

Aちゃんでもいいだろ！｣

A｢え…｣

顔を青くして冷や汗を垂らしたAの横で、頬杖をついていた猫娘が言い返した

猫娘｢その子はAちゃんが持ってた鈴がお気に入りだっただけなの、それに学校があるってアンタも聞いたでしょ？｣

先程の仕返しのようにふんと鼻を鳴らす

ねずみ男は猫娘の言葉に目の端を釣り上げながらも赤ん坊に顔を向けた

ねずみ｢おめぇの本当の親は何処で何してんだよ…｣

✱

次の日から渋々赤ん坊の世話をし出すねずみ男

だがそれは楽なものではなかった

赤ん坊を背に背負って歩けば他の妖怪達にからかわれる

それらを追っ払ってみれば今度は赤ん坊が小を漏らしてしまう

オムツを変えてやろうと反物屋に寄って店内の縁台で交換しているとまた漏らしてしまった

しかも遠距離に飛ぶわスプリンクラーのように撒き散らすわでねずみ男も反物屋の主人もたまったもんではない

仕方なく赤ん坊の食べ物求めて饅頭屋に立ち寄る

汁粉をタダでくれるものだから油断して赤ん坊に注意しないでいると、あっという間に店中の菓子を食ってしまった

＿＿最終的には人が居ない時間帯の風呂屋に落ち着く

風呂桶に水を溜めたねずみ男は赤ん坊を突っ込んでわしゃわしゃと洗った

ねずみ｢…たっくよぉ…俺に乱暴しないのはいいけど…

お前もう少し大人しくできねぇのか？｣

赤ん坊が洗い終わると自分の体も洗いながらボヤく

ねずみ｢だいたい俺は子守なんて向いてねぇんだよなぁ…｣

すると赤ん坊の重みが無くなっていることに気付いた

辺りを見渡すと赤ん坊はいつの間にか湯船の縁を歩いて遊んでいる

そして次の瞬間にはドボンと湯の中に落ちていってしまった

妖怪といえどまだ赤ん坊

自分よりも全然深い水中に落ちたらどうなるか…考えたねずみ男は慌てて立ち上がる

ねずみ｢大丈夫か、おい！？｣

しかし赤ん坊は笑いながらあっさりと浮かび上がってきた

ねずみ｢あら、お前泳げるん…｣

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