短いダリ先生とのお話 (ページ9)

今日:23 hit、昨日:13 hit、合計:2,278 hit

9 ページ9

クエルナ・A。
豪邸な病院で生まれ育ったお姫様である。

13歳で世間に顔を知られ、15歳には顔に泥を塗った。

たった一人の娘にしては、可愛がられて育ったほうだと思う。お父様はお仕事があるのにいつも私を遊んでくれて、お母様は私に料理を教えてくれた。

他の家系よりホントに幸せだった。

『せ、先生になりたいの…！今日学校の先生がね___』

大きな夢だって叶えてくれた。
一人暮らしをしてもいいよ、と受け止めてくれた。

ただ、一つの鎖が私の足を止めるのだ。

「お前の婚約者だ。」

18のときだったかな。父達が私達の家に招いた男は私の婚約者。

「Aは人と関わるのが苦手でな。そんなAが好きだと言ってくれたんだ」

お父様とお母様の目は輝いていた。
きっと、私には結婚は無理だと思ってたんだろう。

表情は固いし、愛想もない。
まあそう思っても当然だよね。

『ふざけないで』

この時の私はどうも子供だった。
勝手に婚約者を作られ私は激怒した。
仲々その熱は収まらなかった。ずっとムカついてばっかでこれを機に私は家を出たんだ。

今でも、ずっと家族達は私を探し続けてる。

婚約者の件はどうなったか知らない。だから彼とは付き合えないのだ。

結婚を前提にとか、中途半端な気持ちで付き合ったらいつか罰が当たるだろう。

『教師を辞めます』

「え？」

理事長室に行って、話をした。もう限界だとか。ストレスだ。とか色々話した。

「ホントに？！もうすぐ僕の孫が来るんだよー！Aちゃんの治療魔術は完璧だし！！ねぇえええ」

引き止められたけど、私が居たら彼が可哀想。

「サリバン様…」

『では。今までありがとうございました』

生徒たちには、顔を合わせないことにした。
ああいう時どういう顔をしたらいいのか分からないから。

我儘で変な子でごめんなさい。

「Aって絶対あの先輩好きでしょ！」
放課後、夕日が教室に渡る中恋バナをした。

『ダリ先輩のこと？』

「うん！どうなの？！結局のところはー、」

『別に普通だよ。婚約者いるし』

「くううううう！なんなのその婚約者って！貴方の気持ちを教えてほしいの！！」

『だから普通って言ってるでしょ』
嘘。

自分の気持ちには知っていた。自分の事しか分からないから。
見て見ぬふりをした。

だってそうしなきゃ駄目でしょ。
これ以上家族に迷惑はかけれなかったし。

(しょうがない運命なんだよ…)