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貴方.
リンクから歩いて十数分、短いようで長い帰り道だったと思う。
少しでも早く一希から荷物を受け取って、練習に送り出さなくては……そう思い、そっと両手を差し出す。
しかし一希はそれを渡すことなく、代わりに私を引き寄せてしまった。
ぽすっ、と一希の腕の中に収まる音がして、同時に柔軟剤の匂いがした。
……って、そんな冷静に分析してる場合じゃなくて。
『一希、……どうしたの?』
「……ううん。強くなったなあ、って。」
『もう子供じゃないんだから、当たり前』
「A。怖いもんは怖い、でいいよ。俺がちゃんと守るから。それに……一人で苦しまれてたら俺も辛い。……何のための彼氏なんですか?」
『……へ、』
ぽん、と頭を撫でられて、体温が上がるのを感じる。
ああもう……こういうところが大好きやけど、相変わらず一枚も二枚も上手だ。ずるい。
一希の背中に腕を回して、ぎゅうっと力の限り抱き着く。もう、怖くないよ。
『一希、あり……』
「待って、無理、今のあかんわ。あと五分は欲しい……」
『五分もハグしてたら変な噂流される!やめて!』
相変わらず……と言えばそうだけど、ムードもへったくれもない私たち。
何やかんや言いながらも、三分はハグしてたとか。
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あお - 26話、「好きやねんやろ」よりも、「好きなんやろ」のほうがよいと思います。途中までしか読んでいないので、楽しんで続きを読ませていただきます (2019年1月5日 20時) (レス) id: 9b31bd131c (このIDを非表示/違反報告)
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