笑わない君と《 Kazuki.T 》 (ページ42)

今日:11 hit、昨日:14 hit、合計:32,516 hit

42. ページ42

貴方.

「A、今日はもう休んでいいから、一希に送ってもらって帰りなさい」

『先生……ごめんなさい』

「何も悪くないんやから謝ったらあかん。な？」

先生は私の頭をぐしゃぐしゃと撫でると、優しく笑ってくれた。

一希が戻ってくるまで、ぼうっとする頭でさっきのことを思い出そうとする。
息が苦しくなってその場に座り込むと、二人が助けに来てくれた。
先生も教え子がこんなことになるのは初めてらしく、凄く強張った顔をしていたのを覚えている。

何がそんなに怖かったのかは分からないけれど、私の人格を否定されたような気がして……悔しかったのもあるのかもしれない。

「注目されるようになるとこういうことも起こる」と私をなだめた先生の言葉が、とても恐ろしく感じた。

「……A！お待たせ。帰ろっか、」

『一希、……ごめん、大事な練習時間が』

「何言ってんねん、たった数十分やろ？その分夜練伸ばせばええだけや」

『……うん、ありがと、』

一希は私の荷物を持ってくれて、とりあえずリンクの外まで誘導してくれる。

先生やリンクメイト、マスコミがいないことを確認してから「ん！」と手を差し出してくる。

『……？』

「今のA、ちゃんと掴んでないとどっか行っちゃいそうで怖いねん。……だから、」

ちょっとだけ頬を赤くして、半ば強引に手を繋ぐ一希。

勢いよく引っ張られたのもあって、少しだけよろけると一希の肩に頭がぶつかる。
それがおかしくて思わず笑ってしまうと、一希は「よかった」と小さく呟いた。