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貴方.
『凄い……』
一希の演技は、見た人を掴んで離さない強い何かがあると思う。
ずっとそばで見てきた私が保証する。ていうか、ファンの方が一番分かってると思うけど。
拍手をしながら立ち上がると、知子と新葉が私に続く。
『やっぱり……やっぱり、違う。一希の演技は、皆を勇気付けてくれる。やけど、私の演技なんか、』
「A、」
隣に並んだとき、私と一希は正反対だとよく言われた。
ニコニコの笑顔の一希、暗くて無表情な私。
一希の演技は何度も見たくなるほど素晴らしいのに、それに比べて私のは酷く淡白だ。
そして、誰からも好かれる一希に、そうじゃない私。
「……何言ってんの。現に今、世界の頂点に立ったのはAでしょ?いつまでもグズグズしてないで笑ってよ!」
『も、元々こういう顔なんやって……』
「そう?さっきはちゃんと笑えてたよ。友野くんの演技見てるとき」
『え?』
新葉は「素直になりなよ」と私の背中を叩く。
いや、素直になるとかそんな問題じゃなくて、何の話か全然分からん。
『……あ!ジャージ忘れてた!』
「ほんまや。友野くん冷えちゃう」
『やんな。行ってくる!』
一希のジャージを持って、慌てて走り出すと、後ろから「頑張れー!」と謎の声援が送られる。
何を頑張るんやろ……そう思ったけど、とりあえず手を振っておいた。
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あお - 26話、「好きやねんやろ」よりも、「好きなんやろ」のほうがよいと思います。途中までしか読んでいないので、楽しんで続きを読ませていただきます (2019年1月5日 20時) (レス) id: 9b31bd131c (このIDを非表示/違反報告)
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