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一希.
『あーもう、寝たい』
「まだエキシビションあるやろ」
『めんどくさい』
「なんてこと言うねん……」と呟くと、Aは目を擦って何とも言えない顔をした。
昌磨くんが変なこと言うから、そんな顔でさえ可愛く見えてしまう。
もうほんまにどうしちゃったんやろ、俺……
『じゃあ一希だけでもちゃんと見ててや』
「言われなくても見てるわ」
『ならいいんやけど』
「ほら、あれやろ、ネイサン……とも滑るんやろ。愛嬌忘れたらあかんで」
まあ、Aは英語話せるから大丈夫やと思うけど……態度悪く見えたら最悪やし。
ほんまはめっちゃいい子やねんでって後から言っても無意味でしかない。
『でもさ、やっぱ一希と滑りたかった』
「ええ、ほんまか?」
『ほんま。やって楽しいやん?』
「ほら」と差し出された手を握ると、Aは俺の手を引いて滑り出す。
あ、俺、エキシビション出ないのに……そう思ったけど、もうあっという間にAのペースに巻き込まれてしまっていた。
『氷上で落ち着けるのなんて、一希と手繋いでるときだけ』
「A」
『失敗したらどうしよって思ってても、一希の顔見たら安心する。体温とか、全部伝わってきて』
目を伏せてリンクを見つめるAに、俺は何も言えないまま引っ張られていくだけだった。
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あお - 26話、「好きやねんやろ」よりも、「好きなんやろ」のほうがよいと思います。途中までしか読んでいないので、楽しんで続きを読ませていただきます (2019年1月5日 20時) (レス) id: 9b31bd131c (このIDを非表示/違反報告)
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