検索窓
今日:7 hit、昨日:3 hit、合計:59,255 hit

47. ページ47

昌磨.



【 本当にいい歌詞なの、この曲。和訳なら昌磨も分かるでしょ?見て、】




苦しそうに胸の部分を押さえるAは、悲壮感溢れる表情で足元を見つめる。
いくら願っても戻ってはこなかった、スケートを滑ることのできる健康な身体。


誰も悪くない。
Aの夢を奪ったのは、強いて言うのなら神様だろう。俺は、神様を信じないけれど……それでも、理不尽で残酷な、そいつの勝手な判断で。

綺麗なダブルフリップ。短期間でここまで取り戻せる彼女ほど、才能に溢れていた選手はいない。
ステップや、美穂子先生が考えた振り付け、それら全てを感情豊かに踊る。滑らかで、美しい。



何で、Aは滑っちゃダメなんだろう。

もっと他にもあっただろう。永遠じゃなくて、一時的なものにしてくれたら……
神様を信じないなんて言っておきながら、心の中では縋り付いてしまっている。情けない、



満たされない、と繰り返しながら、頭を抱え、膝をつき、空を仰ぎ、顔を伏せ泣いているような仕草を見せる。

胸が苦しくてたまらない。この時間が、永遠に続いてほしい、そう思う。


周りの視線もあるのに、俺はリンクサイドからAの演技に釘付けになっていた。
滑り終えて、何度も何度もお辞儀をするAがこっちに戻ってくるのを確認すると、持ってきていた上着を着せて裏へと連れて行く。もちろん、そんな俺にも視線が集まる。

……でも今は、そんなこと、どうでもいい。




『昌磨、』

「……ん?」

『ありがとう、……私なんかの演技で、泣いてくれて、』




ボロボロの泣き顔で笑うAは、俺の頰に伝う涙を拭う。

最初で最後のAの演技を見届けられて、本当に良かったと思った。
最後だなんて分からないけれど、直感的にそう思ったのだった。

48.→←46.



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.6/10 (33 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
97人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

星原(プロフ) - ななさん» 返信遅くなってしまい申し訳ないです( ; ; )今後ともよろしくお願いします! (2018年11月14日 18時) (レス) id: 7b61f158ca (このIDを非表示/違反報告)
なな - 続きが楽しみです。更新お待ちしております(^-^) (2018年10月16日 13時) (レス) id: 240f4ab893 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:星原 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2018年10月14日 23時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。