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＊ ページ8
｢翔太〜、行くよ〜｣
すぐ隣にあった魚売り場に足を向け、歩きだそうとしたところで、突然誰かの声だけがクリアに聞こえた。
｢……え……？｣
振り返って、声の主を探す。
そこにいたのは、1組の夫婦。
聞こえた声は、その夫の方だった。
『ーー美味しそうね』
『こっちもいいんじゃないか？ほら、値段も安い』
『そうね、ーー』
『こういう時は直感が大事だそうだぞ』
『そう？ーーこっちね！』
会話は、普通の仲睦まじい様子がわかるものだ。引っかかったのはそこじゃない。
『……さあ、おいで。まだまだあるぞ』
｢っ……！｣
声が、似ている。
姿形は紛れもなく別人だ。
だがその声は、あの人に、
父に、似ていた。
｢阿部ちゃん？どうかした？｣
｢……え？｣
｢え、じゃねーよ。なんかあったか？あ、買い忘れてたやつとか｣
手元で少しよれてしまっていた買い物メモを翔太は覗きこんだが、｢買い忘れてねーじゃん｣と呟いた。
｢なに、気分悪い？帰る？｣
｢……ううん。大丈夫。でも早く買って早く帰ろ｣
｢おう｣
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作者名：麗華 | 作成日時：2020年6月11日 2時
