日の沈む場所 ページ25
二人になった途端、沈黙が訪れる。烏が鳴いたり、風に吹かれて木が揺れたりする音だけがただこの場に響く。
「ソラ。ちょっと散歩しよう」
彼の有無を聞かず、手を引っ張ってあの丘まで走った。子供の腕はどうしてこんなに細くて、弱っちいのだろう。こんな手で人なんて殺せるはずがない。いざとなったとき、彼はどうやって自分の身を守ればいいんだろう。もし、違う時代、場所で生まれていたら私がずっと守ってあげられたのに。
初めて来た日が暮れた後の丘。何度も来たはずなのに、時間帯が違うだけでそこは知らない場所みたいに思えて、なんとなく悲しくなった。
私が立ち止まると、彼は震える声を精一杯振り絞ってこう言った。
ソラ「別に、ここまでしなくても僕は大丈夫…」
目線を合わせるため、その場に両膝をついた。
ソラ「大丈夫だから…」
今度は腕で隠されていて、見えない表情。やっと見えたと思っていたのに、また隠すのか、君は。
こんな時に何て言葉をかけるのが正解なのかは、私はまだわからない。でも、出来ることならある。
「ソラ」
彼の名前を呼んで、両手を広げた。
「おいで」
もしかしたら、彼が失ってきたものの数も、内容も、その辛さも私はわかってあげられないかもしれない。
辛い記憶に苦しめられることなく、ただ幸せな男の子として生きて欲しい。言いたいことを我慢しなくていいって、そう思えるようになって欲しい。こんなに求めてばっかりじゃ、きっと彼は困ってしまうだろうけど。
ソラ「い、いいよ。気にしないで。本当に。大丈夫だから」
大丈夫って言う人が本当に大丈夫だったことなんて、一度もない。
「気にするよ。私ソラのこと大好きだもん」
そう言って、ゆっくり抱き締めた。
ソラ「いいって、言ってるのに…」
「ごめん」
ソラ「離れがたくなるだけなのに…っ」
「そうだね。本当に、そうだ」
ソラ「う、うああああ〜〜〜〜だったら何でこんなことするんだよ〜〜〜」
彼の泣く声が、静かな夜空に響く。こんなに泣かれちゃってどうしたものかな。
「こんな時に抱き締めなきゃ、いつ抱き締めるっていうの？わかんないでしょ」
ソラ「わかるわけないだろ…っ！！こんなの初めてなんだ……っ」
「そっか。うん」
ソラはしばらく、いつもは出さないくらいの大きな声で泣きじゃくった。
私は彼が落ち着けるまで、ゆっくり頭を撫で続けた。
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ナツメ(プロフ) - 緑那さん» 緑那さんはじめまして、作者のナツメです〜〜＼(^_^)／私も緑那さんのコメントを読みながらどきどきしちゃいました…！！めっちゃ励みになるし超嬉しいです〜〜(;_;)本当にありがとうございます！これからも頑張るのでぜひ読んでいただければなと思います！ (2019年6月25日 20時) (
レス) id: 11619fb97c (このIDを非表示/違反報告)
緑那(プロフ) - はじめましてコメント失礼します……！興奮しすぎてまとまってない感想を殴り書きしたら普通に文字数オーバーだったのですごく簡単になってしまうのですが、読んでるあいだずっとどきどきしてました。自分でもびっくりです読んでてめっちゃわくわくしました……！！ (2019年6月25日 17時) (レス) id: 3c1948d3a1 (このIDを非表示/違反報告)
ナツメ(プロフ) - すーさん» わー！！ありがとうございます！頑張ります＼(^_^)／ (2019年6月14日 6時) (レス) id: 11619fb97c (このIDを非表示/違反報告)
すー(プロフ) - 続き待ってます！ (2019年6月9日 13時) (レス) id: 53cfd44f92 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ナツメ | 作成日時：2019年5月25日 23時
