六等星 3

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眉を下げて笑うページ9

耳をつんざく、どーんと大きな音が会場に響く。埃が立ち込めて2m先が見えない。

ハンゾー「っぐ！ああぁぁっ！」

声がした方を見てみると、天井が落ちてきた場所から対角線上の壁にハンゾーが腕から血を流してめり込んでいた。よくめり込む奴だな、なんてそれどころではない。

レオリオ「おいクラピカ！」

嫌な予感がして、埃が立ち込める中をレオリオの声も無視して走った。近付けば近付くほど、その嫌な予感が現実になるような気がする。
次の瞬間、足元で重みのある何かを蹴って立ち止まる。冷たく、ずっしりとしたそれを拾い上げてみると、それは彼女が先程まで持っていた銃だった。
目を凝らすと、その先に彼女がいた。私を見つけて、また困ったように眉を下げて笑った。

クラピカ「A！」

やっと見つけた彼女は、よりによって落ちてきた中でも一番大きくて分厚い瓦礫の下敷きになっていた。上半身だけを何とか出している。

「足が挟まっちゃって出れないんだ。この痛さわかる？じわじわと自動車スクラップのプレス機にかけられている気分」

クラピカ「喋るな！」

何とか彼女の上にのし掛かる瓦礫を動かそうとするも、びくともしない。

クラピカ「クソッ！」

キルア「退け！」

突然現れたキルアがものすごい気迫でそう言い放ち、瓦礫に手をかける。するといくら力を入れてもびくともしなかった瓦礫が、ぐらりと動き始めた。私は彼女の手を取り、脈に触れる。何でも良いから彼女が無事だという証拠を見つけたかった。

その間に、キルアは起こした瓦礫を今度はどーんと後ろへ倒す。いつの間にか回りには大勢が集まってきていた。

クラピカ「…A」

「私は大丈夫さ。こんなのA様にかかれば新手のプレス健康法に他ならないね。それよりクラピカ、酷い顔してる。あまり人に見せない方がいい。トイレで顔洗ってきなよ」

あまりにも、

クラピカ「…あぁ、そうだな」

あまりにも彼女が強くて、自分が弱くて情けない。

レオリオ「ひでぇ、全身打撲だ。それに吐血もしただろ。隠しきれてねぇぞ」

レオリオが容態を見ながら言えば、彼女はふざけてるみたいに言い返していた。

「飲み込んだらギリギリ吐血じゃないでしょ」

レオリオ「バカ野郎。お前何か持病持ちか？」

そこからは混乱していて、どうやってトイレまで行ったのかさえも覚えていない。
ただ、トイレの鏡で見た自分の目は、カラーコンタクトをしていても誤魔化せないくらい紅く、紅く燃え上がっていた。