コミュニケーションは自己紹介から ページ38
目を醒ますと同時に、瞼を開ける。電気ショックと、連日の疲れからくる体の痛みは随分マシになっていた。
まず視界に飛び込んでくるのは若々しい少年の顔。灰色の髪、同じ色の目は彼の肌の白さを一層強めている。それはまるで、天使のようだ。
「なんて可愛いの…」
『やべっ』
天使は私の正直に出てしまった感想を聞くや否や、やばい!という顔で、私が横になっているソファーから一歩引く。
上半身を起こして、あたりを見回すとそこは天国なんてところではなかった。昨日訪れたエドの研究室だ。
「冗談…というか君、こんなとこで何してんの」
天使のように可愛らしいショタを怯えさせてはなるまいと本能が働き、瞬時に話題をかえた。喉が渇いたな、何かないかしら。
『別に…』
別に…だと?可愛いなまったく。
もう一度あたりを見回して、近くにクロロやエドがいないことに気付く。こんな地下室に私とショタを二人きりにさせていいと思ってるのか?危なすぎるじゃないか、まったく何考えてんだあいつら。ショタの身に何かあったらどうする。責任取れるんだろうな、えぇ?
という一人芝居はこのへんにして。
「…まぁ、いいけど。それより薄着だし寒いでしょ。こっちおいでよ」
完璧!!ショタを気遣いつつ同じソファーに座らせることで二人の物理的距離を縮め、相手の方からこちらに来させることで自然に警戒意識をほぐし心の距離も縮めようという神業!!!もはやこんな小賢しい手は私しか使えないのでは……!?!?
『行かない』
即答かよ!長年の経験によって編み出された神業をひゅるりと軽い身のこなしで避けられ、かなりショックだがそんなことでくじける私ではない!むしろ攻略が難しいほど燃えるぜ…!!
「…悪かったよ、昨日は。クソガキとか色々言って」
素直に謝るのがお姉さん法度の基本中の基本だ。ショタ相手だろうと何だろうと、筋は通させてもらう。
『怒ってるわけじゃない』
なのに彼は何の感情も籠ってないような声で、ずっと斜め下を見ている。ふむ……なるほど、やっぱり難ありだ。育ちも悪そう。同じだからわかる。私なんかと同じにされたくないってことも。
「私、Aっていうの。エドとは古くからの知り合い。好きな食べ物は…ラーメン。特技はパフェの早食い」
やはり先手必勝じゃないか?
『…ソラ』
「空?」
天井を見上げる。へぇ、地下ってこんな風になってるんだ。
『…僕の名前だよ』
「な、なるほど」
恥っず…何やってんだ自分。
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作者名:ナツメ | 作成日時:2018年11月19日 18時