お前ってやつは… ページ29
天候の影響もあり、見積もっていた日時より二日も早く現地に到着した。
ここは小さな島国、ジャポンである。
初めて来たが、案外栄えていて驚いた。それにジャポンはハンゾーのような奴がたくさんいる場所だと勝手にイメージしていたが、全然違う。みんな普通の服装だし髪もちゃんとあった。
クロロから送られてきた位置情報を辿って到着したのは、郊外にある小さな旅館。ちなみにそこへ辿り着くまでに電車を利用したのだが、馬鹿みたいに混んでいて久しぶりに死ぬかと思った。この国は小さいわりに人が多すぎる！
話を戻そう。とにかくその旅館に到着した時、私はまさかと思ったのだ。
「クロロ・ルシルフルという名前で、宿泊している男性はいませんか？友達なんですが」
半信半疑だった。彼がそんな適当な真似するはずないと心の何処かでそう信じていたから。
『えぇ、いらっしゃいますよ。知り合いが来たら通してくれと伺っております』
女将のこの言葉を聞いたとき、私の『まさか』が確信に変わった。
そして案内された部屋の引き戸を勢いよく開けると、ジャージ姿のクロロが湯飲みで茶を飲みながら昼のワイドショーを見ているところだった。
「……」
クロロ「……」
お互いに沈黙する。テレビの向こう側でタレントが『ギャハハ！』と笑う声だけが空虚に室内に響く。
私があまりにもいきなり来たもんだから彼は真顔でこっちを見たまま動かなくなった。長旅で疲れたし突っ込むのはやめておこうか。
クロロ「何か言ってくれないと困る。こんなとこを見られた俺はどうしたらいい？」
流石クロロ。こんな時も平静を装うあたり、大物だ。
「じゃ、とにかく入っていい？えっと……履き物は脱ぐんだっけ」
クロロ「スリッパは脱がなくてもいい」
「そう、じゃあお邪魔します」
部屋に上がって、クロロとテーブルを挟んだ向かい側に腰を下ろす。
いや、なんだコイツ。なんで私はこんなやつのためにはるばるこんなところへ来てしまったんだ？彼の服装と『昼まで寝てました』感が溢れる寝癖を見てそんなことを思った。
クロロ「ひとまず、疲れただろう。茶でも飲め」
「うん、ありがとう」
こいつ本当にクロロか……？
クロロ「試験はどうだった？」
「あー、まぁ簡単だったかな」
いや、でもクロロの匂いがするしなぁ…いや、変な意味ではなく。
クロロ「ちょっと待て、やっぱり着替えてくる。お前の余所余所しさが半端じゃない」
あ、クロロだな。
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作者名：ナツメ | 作成日時：2018年11月19日 18時
