Never, never, never, never ページ7
クラピカside**
試験官の合図と、吹っ飛ばされたハンゾーが壁にめり込むまでは、文字通り瞬きを1回するくらいに一瞬のことで、この場にいるほとんどが何が起こったのかわからなかった。
さっきまでハンゾーが立っていた場所にはAが立っていて、その表情はここからでは見えない。ただ、彼女の延長線上の壁に思いっきり体を打ち付けたハンゾーは口元に笑みを浮かべていた。
ハンゾー「っってぇな…」
どうやら頬を殴られた衝撃で壁までぶっ飛んだらしく、ハンゾーの左頬は痛そうに腫れている。全員がその様子を何も言わずただ見ていた。
警戒を表すあたりの静寂に構う素振りもなく、Aはゆっくり手を握りしめて前へ伸ばす。真っ直ぐに伸ばす。ハンゾーの視線は向けられた拳、自らの左頬に腫れを作ったその一点に集中する。ハンゾーに向けられた拳が何を意味するのかはわからなかった。
しばらくハンゾーが距離を置いてAの動きを窺う。彼女は腕を伸ばしたっきり、固まったようにピクリとも動かなかった。ハンゾーはAの背後へ移動して警戒しながらも少しずつ距離を詰めていく。そして、彼女の視界にまったく入らなくなった瞬間、一気に距離を詰めた。渾身の一発を打ち込もうとするハンゾーの拳が彼女へ届いた思ったその時、今度はこちら側の壁に吹っ飛ばされたハンゾーがめり込んだ。
レオリオ「…な、何が起こってるんだよ」
目の前で起こっていることがあまりにも速すぎて混乱しているレオリオにヒソカが答える。
ヒソカ「彼女が何の意味もなくただ手を伸ばしてポーズをとっていたと思うかい?アレは自分の拳が届く範囲の円周を測っていたんだよ♥」
キルア「にしても、動きが尋常じゃないくらい速いぜ。あの近さで相手の拳が届くより早く殴るなんてフツーできねぇよ」
あたりに緊張が走る。
今度は左頬を殴られ、すっかりハンゾーの顔はいつもの1.5倍くらいに腫れ上がっている。その時、振り返ったAの表情を見て言葉を失った。
レオリオ「…お、おい……なんつー目ぇしてんだ…」
彼女は、目付きだけで人の命を奪いそうだった。ハンゾーの方へ向かい、ゆっくりと足を進める。試合が始まってから言葉を失ったように一言も話さないAに不信感が芽生え始めてきた頃、ようやく彼女が口を開く。
「君、何で頬が痛いかわかる?」
いつもとは何処か違って、本当は普段と何ひとつ違わないのであろう彼女が楽しそうにハンゾーを見下ろした。
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作者名:ナツメ | 作成日時:2018年11月19日 18時