彼女らしい ページ46
クラピカside
ハンター試験に合格して、Aと別れてからおよそ三週間。色々な足止めもあり、時間はかかったが私達は無事にキルアとの再会を果たした。
ゴン「キルア、これ」
Aが居ないことに気を落としていたキルアだったが、また会えるだろうと私が言うと表情は元に戻った。けれど心の中ではまだ引っ掛かっているかもしれない。だとしたらきっと、ゴンが今渡した封筒の中身は、その絡まった何かを解く機会をくれるのだろう。
キルア「なんだ?コレ」
ゴン「Aからだよ」
彼女は気性の荒いところがあったから、三週間前、そんな彼女からの手紙が鞄の中から出てきたときは驚いた。まぁ、直接渡さないあたりAらしいが……そんなこと言えるほど、私は彼女を知らないことも確かだ。手紙の字は驚くほど丁寧に書かれていて、一筆の狂いもなかった。でもよく考えてみると、そういう迷いがないところは本当に彼女らしい。
同じくその手紙はゴンやレオリオ、キルア宛にもあった。それぞれの手紙に何が書いてあったのかは知らない。個別に宛てて書かれた時点で、知るべきではないと思う。
キルアはその場で封を切り、便箋二枚分を歩きながらも熱心に読んだ。終わりに近付くに連れ、文を目で追うスピードは下がっていく。
キルアが黙って手紙を読んでいる間、ゴンとレオリオも黙って目を伏せて、それぞれの思いに耽っていた。
彼女は、ズルい。一度逃げられると、もう二度と尻尾さえ掴めないような気がする。それはもう、泥棒とか、悪党の域だ。
でも、そんな印象を払拭できるくらい彼女の心は優しさで満ち溢れている。人のことを思って、怒ったり、笑ったりできる強さがある。
そんな彼女に惹かれて、今度は私が彼女のために。なんて思っていたのもきっとバレていた。
バレていたから、私の心残りも、未練も拭き取るために手紙で語ってくれたのだろう。
それって、もう別れを告げられているのとほぼ同じだ。
キルア「…何だよ、これ……」
読み終えたキルアは、俯いたまま便箋を握りしめて肩を震わせた。
キルア「…クラピカはわからなかったのか……?
Aはもうっ、俺達と会うつもりなんて全然無いじゃねぇかっ!!!」
その時、地面にキルアの涙が落ちる。何も言えずに離れてしまったキルアは、誰よりもどかしいはずだ。
クラピカ「キルア、私はAに言ったんだ。“また会おう”って。今は自分が言ったその言葉を信じようと思う」
けれど私も、もどかしい。
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作者名:ナツメ | 作成日時:2018年11月19日 18時