第35話 私の大切な人よ ページ37
「ねぇ、A」
「なに?」
「僕はAが大切で大好きだ」
「行成何を言うのよ」
恥ずかしげもなく告げる雨を不思議に思い見上げる。また少し背が伸びただろうか。それでも小柄な雨は小さく見える。
「Aが傷つかないで欲しいとずっと思ってる
キミに家のしがらみを抜け出して自由に生きて欲しいと願ってる
逃げて欲しいと願ってる」
「抜け出しても、逃げ出しても、自由を手に出来るのだとしても、私は呪術師である事を辞めないわ
それがどれだけ惨めでも理不尽な目に合っても周りに哀れと言われようとも、際限なく罵声で罵られようとも、凄惨な死を遂げても、結局は私が決めた私の人生なのよ」
「五条悟を殺してでも?」
「悟は絶対に殺さない」
「…どうして?前は悩んでいる風だったけれど」
「…彼等と居られる日常が楽しいの
悟は友人よ。私はそんな彼を殺せない」
「……ふふっ、そっか!
あんなに家族以外には無感情だったAに
父上からの命令に逆らわなかったAに
漸く大切だと思える人ができたのか」
「…そうね。
それも三人も」
「それは凄いね!
前も楽しそうだと思ったけれど本当にAが呪術高専に行ったのは正解だよ」
雨は本当に嬉しそうにその軟弱な身体を曲げて笑う。この子がここまで笑うのは珍しい。いつもは人形の様に美しい顔は殆ど表情を変えることはないから。
「…良かった。
Aにまた大切な人が出来て」
「…ありがとう雨。
でも、忘れないで」
“貴方も私の大切な人よ”
流石に何時までも話している訳にはいかない。
恐らく近くには側近が迎えに来ているだろう。
それだけを告げて足早に雨の元を去る。
最後に雨はまた来月ねと手を振ったが振り返すことは出来なかった。
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順位が更新されてました!
ありがとうございます!!!!
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卯月@スイ(プロフ) - ナッツさん» コメントありがとうございます!!がんばりますね! (2021年1月20日 7時) (レス) id: 6ffd6a43ea (このIDを非表示/違反報告)
ナッツ(プロフ) - ニヤニヤしながら見てしまいました(^^)更新楽しみにしていますっ! (2021年1月19日 22時) (レス) id: 528660073f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:卯月@スイ | 作者ホームページ:http://weareasas
作成日時:2021年1月14日 15時