第28話 穏やかな家族の時間 ページ30
「ごじょー面白いな!」
「だから、悟兄ちゃんでしょ?」
「だって姉ちゃん、ごじょーって言うじゃん」
真琴の髪を乾かしながら会話をするのは随分久しぶりで頬が緩む。相変わらず指通りがいい髪の毛だ。
「姉ちゃんはいいのよ」
「なんで」
「姉ちゃんは五条と同い年だからね」
「ずるい!やだ!俺もごじょーって呼ぶ!」
「え〜?…じゃあ、姉ちゃんは五条の事悟って呼ぼうかしら」
「…む、俺も悟兄ちゃんって呼ぶ!」
「…そう」
姉は一歩先をいく生物である。
よく言ったものだ。
現に真琴は私の考えに気付いていない。
五条に話した通り真琴は八千草家の正式な人間では無い。あくまでも保護という形を取っているだけで未だ鳴神家の側妻の子という扱いだ。
だが、ある程度の素養は身に付けなければならないのである。それは、八千草家の顔を汚さない為。
これからの働き次第ではあるが彼等は正式な八千草家の人間になる。
それを知っているのは祖父母と現当主と長弟の太陽のみ。
母と弟達は鳴神家当主にとって最高のカード。
私が私より弱い当主に従っているのは人質に取られているから。
私が“縛り”を結び、母は八千草家に帰りはしたが追い出された訳では無い。立場上は鳴神家の側妻である。
そんなこんなで真琴にはもしもの為に素養を身につけて貰う必要がある。
自分で自分の居場所を護れるように。
「はい、終わったよ」
「姉ちゃんありがとー!」
買ったばかりのパジャマに身を包んだ真琴が走り回る。慌てて用意したものだがお気に召した様で喜んでいたと夏油が言っていた。
「姉ちゃん、あそぼ……?」
「…そうね。久しぶりに何かしましょうか」
ドライヤーのコンセントを丸めていく最中、制服の裾を引っ張った真琴は少し不安げで大分我慢させてしまっていた事が伺える。
実家に居た頃から余り遊んであげられなくて、寂しい思いをしていたのだろうか。
太陽も井鷺も真琴も…。
三人の弟達を順に思い浮かべる。
「おれね、おれね、」
「ゆっくりでいいから落ち着きなさい」
あれもしたいこれもしたいともう夜になったから殆どは厳しいものばかりだったが真琴は話しているだけで楽しいのか私の膝の上で私を見上げながら指を折る仕草はとても愛らしい。
自室に居てよかったと緩む頬を真琴の頬に擦り付けた。
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卯月@スイ(プロフ) - ナッツさん» コメントありがとうございます!!がんばりますね! (2021年1月20日 7時) (レス) id: 6ffd6a43ea (このIDを非表示/違反報告)
ナッツ(プロフ) - ニヤニヤしながら見てしまいました(^^)更新楽しみにしていますっ! (2021年1月19日 22時) (レス) id: 528660073f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:卯月@スイ | 作者ホームページ:http://weareasas
作成日時:2021年1月14日 15時