序章 ページ2
私は“術式”に恵まれた仔だった。
鳴神家相伝の術式─雷霆呪術─を身体に刻まれ、産まれた私をその母胎である母に更に仔を孕.ませた。
父にどれだけ言い様に使われても
母にどれだけ畏れられても
血の繋がった母や弟達が無事ならそれで良かった。
私はいつか呪術師として凄惨な死を遂げる事が決まっていたから、
それでも、生きたいと、もう少し傍に居たいと
願ってしまったんだ。
「A、A、貴女は強く居て。
どうか、私達を護って」
「うん、おかあさん」
幼い頃、母と約束した。
弟達を愛し慈しみ、守り抜くと
「A、A、弱くていいのよ
貴女が居なくなったら哀しいわ」
「うん、おかあさん」
私は『弱く強い呪術師』であれ、と
母は壊れていた。
無理矢理側室として迎え入れられ『術式が刻まれた仔』を産んでしまった。
それから、母は三人の子供を産んだが
父と言うには余りにも顔を合わせる事の無い人が望む子は産まれることなく、凌.辱されただけだった。
母は気を病み、私は父の傀儡として生きることを定められた。
それでも良かった。
母は私を畏れていたが深く深く愛し慈しんでくれた。
可愛い弟達はあまり会えない私を慕ってくれた。
私の大切な人──雨は私に幸せを与えてくれた。
でも、私に生きたいと思わせてくれたのは
一般家庭から来た何のしがらみにも囚われない夏油傑という名の真面目で気の良さそうな笑みを浮かべる姿にはとても似合わないボンタンにお団子ヘアの装いの彼。
彼は私に他を愛する心を与えてくれた。
生きたいとまだもう少し彼と、彼らの傍に居たいと思わせてくれた。
「A、私は必ず君を幸せにするよ」
恥ずかしげ無く告げられた言葉を今でも私は覚えている。
愛を育んだ時間は、輝かしい青春時代は
もう返ってこないけれど
「手を繋いだら少しは温かいだろう?」
私はもう、その手を取る事が出来ないけれど
今までの日々、与えられた想いは
私の中で子の記憶は
色褪せる事無く“永遠”を生きている。
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2月16日修正いたしました

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卯月@スイ(プロフ) - ナッツさん» コメントありがとうございます!!がんばりますね! (1月20日 7時) (レス) id: 6ffd6a43ea (このIDを非表示/違反報告)
ナッツ(プロフ) - ニヤニヤしながら見てしまいました(^^)更新楽しみにしていますっ! (1月19日 22時) (レス) id: 528660073f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:卯月@スイ | 作者ホームページ:http://weareasas
作成日時:2021年1月14日 15時