第30話 私にとって嫌なこと ページ32
「今日は随分遅いんだな」
「えぇ、おはよう……ほら、悟におはようは?」
「悟兄ちゃんおはよう!」
「…おぉ、はよ」
ガタガタガターンとテーブルに備え付けられた椅子に座っていた夏油が転げ落ちた。
悟も目を見張っていたが軈て楽しそうな笑みを浮かべる。
「夏油にはしないの?」
「おはよう!傑兄ちゃん!」
「あぁ、おはよう。Aもおはよう」
「おはよう夏油。硝子は?」
「まだ見てないな…それよりも」
「姉ちゃん!太陽兄ちゃんから電話!」
「はいはい…夏油さっき何か言いかけてた?」
「いいや、大丈夫だよ」
変な顔をした夏油は悟にニヤニヤと見られ睨み付けている。
いつもなら大して相手にもしないのに今日は随分と構うんだなと横目で見つつも私の携帯を持っていた真琴から携帯を預かる。
「もしもし?」
「真琴、何時頃に帰ってくるんだ?」
「そうねぇ、今出る頃だからそっちに着くのは十時頃かしらね」
「…姉貴、帰りたくないんだろ?俺が迎えに行くよ」
「そう、ね。じゃあ駅に迎えに来てもらえる?」
流石に長弟の太陽にはお見通しの様だった。
電話を切りため息をつく。
帰りたくない訳では無い…いや、嘘という訳では無いのだろう。
私達が住むのは離れとは言い難いほど広い屋敷だが八千草家の本家では無いにしろ、八千草家に帰るのだ。
母は私を見たら辛く表情を歪めるだろう。
祖父母は私に見向きもしないだろう。
現当主は私に媚びを売るだろう。
使用人達は私に下卑た視線を向けるだろう。
屋敷に居る者達は皆、理由は三者三様であるだろうけれど私に取り入ろうとするだろう。
それが堪らなくイヤだった。
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卯月@スイ(プロフ) - ナッツさん» コメントありがとうございます!!がんばりますね! (2021年1月20日 7時) (レス) id: 6ffd6a43ea (このIDを非表示/違反報告)
ナッツ(プロフ) - ニヤニヤしながら見てしまいました(^^)更新楽しみにしていますっ! (2021年1月19日 22時) (レス) id: 528660073f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:卯月@スイ | 作者ホームページ:http://weareasas
作成日時:2021年1月14日 15時