光柱、亡き者を想ふ ページ3
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「月夜…」
今から七年前に他界した私の“唯一無二”
他界したのではない、私が殺した様なものだ
不意に澄んだ声色が聴こえた
あまね「まだお帰りになってなかったのですね」
あまね様はお館様の妻だ
とてもお美しい、良き人に巡り会えたと思う
そう思うのも烏滸がましいほど彼女は美しい
「…あまね様お邪魔でしたか?」
あ「いいえ」
「とは言いましてももう遅いので帰りますがこれ、お子様方に差し上げて下さい」
小さな風鈴が五つ入った風呂敷をあまね様に渡すと少し、ほんの少しだが微笑んだ
「ではお休みなさいませ」
昔馴染みの子供達は愛らしいがとても厳しく育てられた
それはならば少しくらい私が甘やかしたって罰は当たらないだろう
彼等は未来を生きるのだから
あぁ、私の家に居る子はもう寝てしまっているだろうか。任に出ているかもしれないな
「月夜、私はまだお前の所には行けない様だ」
満月の夜
空に浮かぶ月を見上げる
こんなに美しい月を見るとどうしても月夜を思い出す
月『逃げろA!俺は大丈夫だ!
…だから、逃げろ』
月『…戻って来るなと言っただろう
目は見えないがお前はそこに居るんだろう
願わくば…───』
その先を忘れてしまった
人の記憶は風化する
歳を重ねるほど記憶は薄れ消えていく
目を閉じればお前が死んだあの日の光景は思い出せるのにそれ以外は沢山の日々を共に過した記憶が甦ることがないのにお前が死ぬ光景だけは忘れられない…なのに
私はもう、瀬戸際のお前の言葉すら思い出せないのだ
走りながらも考えるのはそう言った嫌な事ばかり
強くあろう
明日からはまた“光柱”として何事にも動じぬ様に
今日、今日だけは、お前を想う事を赦してくれ
耳につけている鈴の耳飾りが想う事を赦す様にチリンと鳴った
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卯月@スイ(プロフ) - 櫻子さん» お楽しみに頂きありがとうございます! (2020年6月3日 20時) (レス) id: ef0564ef41 (このIDを非表示/違反報告)
櫻子(プロフ) - 完結おめでとうございます!この作品更新楽しみにしてました、お疲れ様でした! (2020年6月3日 15時) (レス) id: 4de55d417a (このIDを非表示/違反報告)
卯月@スイ(プロフ) - 奈雪さん» コメントありがとうございます。こういう柱がいたらいいな、から始まった自己満足の物語にも関わらずそんな風に言っていただけて嬉しいです。読んでいただきありがとうございます! (2020年6月2日 22時) (レス) id: ef0564ef41 (このIDを非表示/違反報告)
奈雪(プロフ) - コメント失礼します。此の物語が大好きでした...!完結、おめでとうございます。読むたびに何故か泣いてしまいました。素晴らしいお話に出会わせてくださりありがとうございました(上から目線っぽくてすみません) (2020年6月2日 21時) (レス) id: 5baed18305 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:卯月@スイ | 作者ホームページ:http://weareasas
作成日時:2020年4月1日 16時