96話 ページ7
外に出ると蓮兄がいた
恐らく雅兄と電話をしているのだろう
皆は蓮兄に群がる中私は動かずにいた
否、動けずにいた
何故かと言われるとよく分からない
ただ、何となく動きたくなかった
海「行くぞ」
グイグイと私を引っ張り輪の中に押し込んだ
それでも私は話さなかった
海「ほら、話せよ」
海斗は蓮兄の携帯を奪い取り私に投げて寄こした
滝「…Aか?」
「…うん」
滝「優勝おめでとう」
「…うん」
滝「叔父さん見に来たか?」
「…うん」
滝「…そうか、良かったな」
「…うん」
それ以外に声が出なかった
ただ頷く事しか出来なかった
涙が流れて話せなかったのだ
兄の声は優しくて背中を撫でる海斗、心配そうに見る湊、静弥、ゆうな、乃愛、梨可
そっと頭を撫でている蓮兄、
慌てふためく遼平、七緒
森岡先生は微笑んでいた
退場する時にもう一度父を見た
その時父は確かに私を見て
笑っていた───
それだけでどれだけ報われたか、長年の胸の蟠りがすっと消えていったか
伝えたいのに言葉が出ない
「ありがとう、ありがとう雅兄…」
絞り出して伝えた言葉はそれしか出てこなくてありがとう、ありがとうと泣きながら繰り返した
滝「おめでとうA」
とても優しい穏やかな言葉に私は満面の笑みを見せた
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しー - めちゃくちゃ面白いです!続きが読みたい! (2023年4月2日 10時) (レス) id: 6072e996ca (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:卯月@スイ | 作者ホームページ:http://weareasas
作成日時:2019年4月11日 20時