100話 ページ11
「…なんか、ごめんね」
海「…別に」
申し訳なくて謝ると海斗は素っ気なく言葉を返した
急に海斗が止まった
先に進んでいた私はくるりと振り返った
海斗は自販機でお茶を2本買っていた
海「やる」
「ありがとう…あ、お金!」
海「要らねーよ、奢りだ」
「…ありがとう」
私はお茶を飲むこと無く手で弄んだ
言うなら今だ
「あのね、海斗」
海「?」
「私、──────」
海斗の顔が紅く染まる
__カァン
遠くから弦音の音が聴こえる
矢から起きた風は数枚若葉を連れ去って
空へと飛んでいき
青い空に溶けていった──
──カァン
『わぁ!雅貴お兄ちゃん見て見て!
お祖父ちゃん、的に中てたよ!格好いいね!』
矢を放った祖父を見てグッと拳を握った兄を見上げて言った
滝『ああ、本当に格好いいな』
そう呟き羨望の眼差しで兄はずっと祖父を見つめていた
──私達は弓引きだ
でも、私は如何して弓を引いているのか聴かれて
答えられる気はしない
それはきっと私の中での弓は生活の一部だからだ
体の一部だからだ
弓道をしていて沢山の事があった
辛い事、悲しい事、悔しい事、嬉しい事、楽しい事
それでも止められなかったのは
私が弓道が大好きだからだ
弓道をしていたから出逢えた人達がいる
出逢えたかけがえのない仲間がいる
新しく芽生えた感情がある
それらに引き合わせてくれたのは間違いなく
弓道だ
私は弓を引く
昨日も今日も明日も来年も再来年も何十年後も
ずっとずっと弓を引き続ける
私は弓道を愛してる
でも、それだけじゃない
誰かに美しい会だと思わせたい
自身が納得する会をしたい
誰よりも美しい弦音の音を響かせたい
そんな思いで私は今日も弓を引く
さァ、弓を引こう
仲間と共に「弦音」の音を響かせよう──
〜Fin〜
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しー - めちゃくちゃ面白いです!続きが読みたい! (2023年4月2日 10時) (レス) id: 6072e996ca (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:卯月@スイ | 作者ホームページ:http://weareasas
作成日時:2019年4月11日 20時