01:泣いてる君がいた ページ1
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─── 新学期
あれだけ何度も、春休みの間に学校までの行き道を確認したというのに本番当日、道に迷ってしまった
念の為と思って早く家を出すぎた事も裏目に出たのか、他校の生徒すらも見当たらない
これは俗にいう、緊急事態
『……どうしよう、』
見たことも無いレンガ道の真ん中で突っ立ったまま、時間だけはどんどん過ぎていく
なんとか冷静さを取り戻し、鞄の中にマップを入れていたことを思い出した
『…………これ、世界地図』
希望は呆気なく灰塵と化した
もう駄目だと思ったその時
深澤「こんなとこでどうしたの〜?」
渡辺「…」
制服を着た見知らぬ男性二人が、声を掛けてくれた
『……〜っ、たすけてください、っ…』
深澤「ちょ、どうしたどうした!わら」
初対面の人の前で泣き出す私は、高校生になったというのに随分と情けない
不甲斐ない自分に、また更に涙が止まらなくなった
深澤「よしよ〜し、もうだいじょうぶ!俺らがいるからね〜」
渡辺「……お前、マジ捕まっても知らねぇからな」
深澤「えぇ〜?わら」
渡辺「…てかさ、コレ何」
知らない人に抱きしめられている状態の中、私の手から取られた世界地図が、もう一人の知らない人の手に渡った
渡辺「……ふは、お前ばかじゃん」
『…………っ、ぅ〜』
深澤「ちょ、翔太!せっかく泣き止んできたのに〜!」
渡辺「だって、まじで!わははっ、!!!」
色んな感情が込み上げてきたせいで止まらない涙、それでも二人は最後までそばにいてくれた
ずっと私の頭を撫でて抱きしめ続けてくれた深澤辰哉くん
馬鹿にしてきたけど、ぶっきらぼうに涙を拭ってくれた渡辺翔太くん
深澤「雪白学園って、俺らも今日から通うとこ!」
渡辺「…こっからすぐだし」
『だって、地図に載ってなかったもん、』
渡辺「あたりめぇだろ、ばーか」
また泣きそうになる私を宥めてくれるのは、深澤くん
私、渡辺くん苦手だ
深澤「ほらAちゃん見て〜、学校あるよ〜!」
目の前には、立派にそびえ立つ大きな学校
学校銘板には"東京都立雪白学園高等学校"と記されていた
今日からここが、私の三年間通う学校
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高校1年生。The童顔で、我慢強いが故に泣き虫
渡辺によく泣かされているイメージがある
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作者名:佐藤さん | 作成日時:2023年1月6日 18時