第玖話 ページ10
闇夜の中、木々を躱しながら走り続ける。
ここまで来る途中紅緒は五体の鬼の首を落とした。
下駄は二、三回地面に打ち付けると日輪刀の刃が出るようになっている。
その刃で悉く葬って来たのだ。
紅緒の足が止まる。
前方から小太りで大柄の鬼が雄叫びをあげながら紅緒目掛けて突進して来たのだ。
が、紅緒は然りとて焦ることもなく下駄を地面に打ち付ける。
コンコン、チリンチリン。
打ち付けると刃が勢いよく飛び出す。
紅緒は迫り来る鬼を見据えると、首枷のリボンをしゅるりと解いた。
その途端、紅緒の目は真っ赤になった。牙は生え、爪は鋭く尖る。
鬼が近づいて来る。
蹴りの構えを取る。
鬼が紅緒の首に掴みかかろうとしたその時、
「ふっ!」
チリン
鈴の音を鳴らしながら素早く回し蹴りをかました。タイミングよく降り抜かれた脚は鬼の頸を宙高く蹴り飛ばした。
ぶしゅう、と血が舞うと共に鬼はぼろぼろと崩れ散っていった。
一方で紅緒は、近くの木に下駄の刃が刺さり、抜けなくなっていた←
「むー!う…ありゃ、抜けない」
ちょっと力み過ぎたかなぁ、と紅緒は下駄を脱ぎ、両手で下駄を引っ掴むとグイグイと引っ張った。
「あ、その前に首枷!」
慌てて首にリボンを巻き直す。
再び下駄を引っこ抜こうと手を掛けた時、ガサリ、と音がした。
振り向くと、其処には鬼では無く、狐面を付けた炭治郎が立っていた。
「あれ、炭治郎?」
炭「…君は、一体」
炭治郎は信じられないものを見たかのような顔をして呟いた。
「私は、私だよ?遊ぶことが大好きな女の子ってだけで」
にっこり笑う紅緒。月光を浴びて儚げな雰囲気になる。
炭「いや!それはないだろう!回し蹴りで鬼を倒せるなんて…!凄いぞ!」←
あ、そこ?
半鬼だってことがバレたかと思った…
紅緒は内心胸を撫で下ろす。
炭「その下駄、刃が日輪刀になってるのか!凄いな!」
炭治郎は木に刺さったままの下駄をまじまじと見ると感嘆の声を上げた。
「うん…でも、それはもう持ってけないなあ…。刺さっちゃったんだもの、此れからは左足の分の下駄しか使えないよ」
そう呟くと、
炭「なら、俺が取ってあげるよ!」
と言って彼は片手で易々と下駄を木から引っこ抜いた。
「ゑッ」←
炭治郎の、そのあまりの怪力に紅緒は思わず変な声が出た。仮にも下駄は深々と木に刺さっており、両手で渾身の力を入れても引っこ抜けなかったのだが←
「(男の子って凄い…)」
初めて紅緒は思った。
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キトラ - とても面白かったです。頑張ってください! (2019年8月16日 4時) (レス) id: 60abaaffa8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:文学少女 | 作成日時:2019年8月12日 23時