第弐話 ページ3
上手く着地して襦袢を差し出す。
少年はありがとうと言いながらも未だ泣いていた。
「ね、君名前は?紅はね、紅緒っていうの」
自己紹介をすると、少年は涙を拭って答えた。
善「俺は我妻善逸。ありがとう紅緒ちゃーん!助かったよぉぉ!この恩は一生忘れないよぉぉ!!」
名乗った途端、善逸は再び泣き出し、紅緒にひしと抱きついた。
「苦しいよぉ…」
地味に力が強かった善逸の抱擁に紅緒は踏まれた蛙のような声を出した。
善「ア"ッ!?ごめんね!?痛かったよね大丈夫!?責任は取るから!!というか可愛いし結婚して!?」←
「ごめんねだけで紅は十分だよ?あと結婚はダメだと思う。家の爺様怒ると思う」←
ごめんねぇぇ!と泣き喚く善逸を紅緒は「不思議な人も居るもんだなぁ」などと少々ズレた観点で見ていた。
善逸は「ええええぇぇ!?」とショックを受けていたが、紅緒は気にせず洗濯物の山を見る。
「…これ、全部干すの?」
善「え?うん。俺、一応弟弟子ってことになってるんだよ。兄弟子とじいちゃんの分」
「一人で?全部?」
善「そうだよ?」
きょとんとした顔をする善逸に紅緒は心配そうな顔をする。あまりの多さに終わるかどうか心配になったのだ。
「ね、紅も手伝うよ」
善「ええぇ!?駄目だよ女の子が!手が荒れちゃうよ!?こんな綺麗な手なんだから!」
「やらせてよ!紅ね、お洗濯物干したり洗ったりするの得意なの!」
善「でも…!」
善逸が反論するも、彼女は既に洗濯物を干し始めていた。その早いこと早いこと。
そんなに時間がかからずに終わってしまった。
善「もう俺居なくても大丈夫じゃん!?」←
思わずツッコミを入れた善逸だったが、紅緒は懐から紙風船を取り出すと、膨らませていた。
「善逸くん!遊ぼ!ご褒美を兼ねて遊ぼうよ!」
善「えっ!?いいの!?」
「うん!ちょっとだけ遊んでも誰も怒らないよ!紙風船、落とした方が負けね!そんで負けた方が言うこと聞くっていうのはどう?」
善「うん、紅緒ちゃんが良いなら」
そう言って二人は紙風船で遊び出した。紙風船を返しながら話をする。
善「普段何してるの?」
「浮世絵師の爺様のとこで絵の勉強!爺様、怒ると怖くて今日サボっちゃった」
善「あ、分かる!俺も剣術習っててさぁ、全然出来なくて。何度も逃げようとしたなぁ」
「おんなじだねぇ!…あっ!」
その時、紅緒が紙風船を打ち上げ逃してしまった。
「負けちゃった…願い事は?」
善「え?じゃあねぇ…」
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キトラ - とても面白かったです。頑張ってください! (2019年8月16日 4時) (レス) id: 60abaaffa8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:文学少女 | 作成日時:2019年8月12日 23時