第七話 ページ8
修行の途中、沙夜の霊園に向かった。鱗滝さんも行って弔ってやりたいと行っていたが、禰豆子を優先して良いと沙夜が言ったため、来たのは俺だけだ。
薄暗くて夜みたいだ。
炭「ここが、沙夜の家か…霊園ってことは、沙夜たちは墓守だったのか?」
「うん、結構古い一族。昔の武将とかの墓もあるくらいだから」
沙夜はそう言いながら咲き乱れる矢車菊の中を迷いなく進んで行く。
様々な色の花だ。禰豆子に持って行ってやったら喜ぶだろうか。
「ここ。炭治郎」
沙夜の足が止まった。見上げると寂れた大きな屋敷が、墓石のように立っていた。
人の気配はない。
沙夜は玄関の引き戸を開けると、中に入って行った。
居間は地獄絵図だった。
天井にも、床にも壁にも赤黒い血が飛び散ってこびり付いていた。
沙夜が白い布に包んだ家族を抱き上げ、縁側から外に出て行った。
俺も白い布で包まれた遺体を運ぶ。
沙夜は地面にそっと遺体を置くと、無言で土を掘り出した。
遺体を置くと、布を捲って弥彦らしき少年の頰を撫でた。
「御免ね、弥彦。一緒に遊んであげられなくて…もう大丈夫。怖い人は来ないから、ゆっくり寝て」
そう言って布を戻し、土を掛け、埋めて行く。
沙夜は一人一人に別れを告げ、埋めていった。
その姿が、酷く痛々しく見えた。
「帰ろ」
沙夜は土で汚れた手をぎゅっと握った後、呟いた。
俺は居た堪れなくなって、沙夜の手を握った。
帰ろうと歩き出した時だった。
向こう側に見えていた矢車菊が一瞬にして散った。
何事かと見ると、其処には牙を剥き出し、涎を垂らしながらこちらに向かってくる鬼の姿が見えた。
近くの野良鬼が集まり出したんだ…!!
炭「逃げろ!!!」
沙夜の手を引きながら走る。
鬼は俺たちをすごい速さで追いかけて来る。
追い付かれそうになった瞬間、俺は沙夜を突き飛ばした。
突き飛ばすと同時に刀を抜き、鬼の腕を受け止める。しかし、あまりの重さに思わず倒れ込む。
「炭治郎!!!」
炭「ぐっ……!」
禰豆子ほどではないが、力がやはり強い。押さえている刀が、どんどん咽喉元へと下がって来る。
炭「(まずい…このまま押されたら刀が喉に食い込む……!)」
炭治郎が鬼に襲われている。
いくら修行しているからとはいえ、まだ炭治郎は呼吸すら習得出来ていない。このままだったら確実に食い殺される。
「何とかしなきゃ…!」
その時、父上が言っていたことを思い出した。
刀の柄に手が伸びる。
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文学少女(プロフ) - ありがとうございます!まだまだ至らない所があるかと思いますが、これからも宜しく御願いします! (2019年6月9日 21時) (レス) id: 2d20336b29 (このIDを非表示/違反報告)
鮭本 - コメント失礼します。とても読みやすくて面白いです!無理しない程度に更新頑張ってください!応援してます!! (2019年6月9日 20時) (レス) id: 17f131f64f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:文学少女 | 作成日時:2019年6月4日 18時