第六話 ページ7
その日は早朝から聞こえる、料理を作る音で目が覚めた。
炭「…包丁の音だ。ん、味噌の良い匂いがする!」
俺は跳ね起きると布団を畳んで厨(くりや)に向かった。
そこでは昨日来たばかりの沙夜が朝餉の支度をしていた。
俺の気配に気付いたのか、手拭いで手を拭きながらこちらに振り向いた。
「あ、お早うございます。御免なさい、起こしちゃった?」
炭「いや、大丈夫だ。凄いな、一人でこの量を作ったのか?」
「まあね。母上は拙が五つの時に脚を悪くして立てなくなったんだ。その時からずっと家事は拙がしていた」
沙夜は釜の中の炊いた米をよそりながら呟いた。
「炭治郎はどの位食べる?注文があるならそれに沿ってよそうけれど」
炭「た、沢山食べたい!」
「分かった、…弥彦ぐらいでいいかな?弥彦凄い食べてたし」
弥彦。
知らない人の名だ。
もしかしたらーー…
炭「その弥彦って、兄弟か?」
「そうだよ、長男で拙より二つ歳下。身長は炭治郎とそんなに変わらない」
沙夜から寂しげな匂いがする。そりゃそうだ、全員鬼に……。
「はい、よそったよ。炭治郎、居間に持って行ってくれる?」
炭「ああ」
米と味噌汁が乗った盆を持って居間に入る。そこには鱗滝さんが座って、何か作業をしていた。
炭「鱗滝さん、そろそろ朝餉で……それは、刀?」
朝餉を置いた後、鱗滝さんの手元を覗き込む。刀の目釘が外れている。どうやら刀の調整をしていたらしい。
鱗「沙夜の刀だ。昨日岩に引っかかっていた時、川が激流なのにもかかわらず、しっかりと握っていた。見てみろ炭治郎」
そう言うと鱗滝さんは俺の目の前に刀を突き出した。普段は柄で隠れている部分の刃に、
『矢車朝晴』、『悪鬼滅殺』
と彫られていた。
鱗「沙夜に聞いたのだが、どうやらこの刀は父親の刀らしい。最後の最後までこの刀で闘っていたようだ」
炭「最後まで……」
俺はこの刀をじっと見つめていると、顔も知らぬ沙夜の父親のことが頭に浮かんだ。
「鱗滝さーん、漬物出しちゃっていいですかー?」
鱗「いいぞ」
鱗滝さんが答えると「分かりましたー!」という返事が返ってきた。
鱗「あの子は将来、良い嫁になるな」
炭「確かに…」
鱗「料理を作る前は薪を割っていたし、洗濯物を干し、畑を耕してくれた」←
炭「仕事早過ぎません!!?」←
余りの手際の良さに衝撃を受けていると、居間に沙夜が入ってきた。
鱗「では頂こう」
沙/炭「「頂きます!」」
さぁ、今日も修行だ。
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文学少女(プロフ) - ありがとうございます!まだまだ至らない所があるかと思いますが、これからも宜しく御願いします! (2019年6月9日 21時) (レス) id: 2d20336b29 (このIDを非表示/違反報告)
鮭本 - コメント失礼します。とても読みやすくて面白いです!無理しない程度に更新頑張ってください!応援してます!! (2019年6月9日 20時) (レス) id: 17f131f64f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:文学少女 | 作成日時:2019年6月4日 18時