第二話 ページ3
父「沙夜、こっちの墓碑も磨いておいてくれないか?」
「はい!…父上、少しお休みになられては?」
父「ふ、そうだな。じゃあ、お言葉に甘えて休んでくるよ。沙夜も、終わったら一緒に休憩しよう。母さんと弥彦が美味しい羊羹を買ってきてくれたんだ」
「なんと!分かりました!早く済ませてきます!」
私はそう返事をする。父上は優しく笑って拙(せつ)の頭を撫でてくれた。
弥「姉ちゃん、まだ仕事するの?早く皆で羊羹食べようよぉ」
「墓碑を磨いたらね。弥彦良い子だから、八千代と母さん、陽蔵と桜とお祖母様、お爺様と待ってて?」
駄々をこねていた弥彦は、良い子という言葉に気を良くすると、近くで矢車菊を摘んでいた桜と八千代の手を引いて家への道を走って行った。
拙の家は代々続く墓守の家だ。拙は長女だから、じきにこの霊園を受け継ぐ。大きくて広い霊園だから、常に亡くなられた方々に敬意を払って管理しなくてはならない。
一つの区間に行くにも長い道を歩いて行かなきゃいけない。
だから、帰ると大体夕方とかだ。
夕飯と羊羹を楽しみにしながら墓地の手入れをこなす。
作業をしていると、花畑の向こう側の道で同い年くらいの女の子二人が可愛らしい着物に身を包んで楽しげに通り過ぎて行く。
自分の服を見る。
薄汚れた男物の着物。生まれてからあんな可愛い着物を着たことがない。密かな憧れだ。
「…いけない、仕事仕事!」
墓石を力強く磨く。雑草を刈って砂利の上で燃やす。
作業道具を籠にしまって背負い、急いで帰路に着く。
夕飯と羊羹を想像して走る。
あと少しという所で、拙は帽子を目深に被り、高そうな生地で出来たスーツを着た男の人とすれ違った。
「…?」
墓参りだろうか?こんな時期に?
でも都会の人っぽいから、盆とかの時に忙しくて来れなかったんだなぁ、きっと。
そのまんま無視して走った。
その行き先が、地獄になっているとも知らずに。
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文学少女(プロフ) - ありがとうございます!まだまだ至らない所があるかと思いますが、これからも宜しく御願いします! (2019年6月9日 21時) (レス) id: 2d20336b29 (このIDを非表示/違反報告)
鮭本 - コメント失礼します。とても読みやすくて面白いです!無理しない程度に更新頑張ってください!応援してます!! (2019年6月9日 20時) (レス) id: 17f131f64f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:文学少女 | 作成日時:2019年6月4日 18時