第十二話 ページ15
二人して斬れた岩を前に唖然としていると、鱗滝さんが来た。
鱗「お前たちを最終選別に行かせる気は無かった。もう子供が死ぬのを見たく無かった。お前たちにあの岩は斬れないと思っていたのに…」
思わずぎゅっと刀を握る。炭治郎は切なげな顔で少し俯いた。
鱗「よく頑張った」
鱗滝さんは炭治郎と拙を撫でて言った。
鱗「炭治郎、沙夜。お前たちは凄い子だ……」
その言葉。
その言葉が発せられた途端、涙が音もなく溢れ出した。
思えば、拙は今まで認められたことが無い。
家族は優しかったけれど、墓守という職業柄、様々なことで認められなかった。
友達。後継。技術。
出来て当たり前。そう言われながら育ったから。
だから、認めてもらえたのはとても嬉しかった。
鱗滝さんをぎゅっと抱き締める。炭治郎も抱き締めていた。
だってそうだ。炭治郎だってまだ子供で、見てくれる人が必要だから。
鱗「最終選別、必ず生きて戻れ。儂も妹も、此処で待っている」
その言葉は、拙たちの胸に深く、それでいて広く染み渡った。
あの後、炭治郎は髪を切り出した。長くなって邪魔なのだろう。
彼は束ねて結い上げても似合うと思うが、そこは其れ。彼の好みが優先だ。
「炭治郎、横っ髪は切れても後ろは難しいでしょ?拙が切って整えてあげるよ」
炭「すまない、ありがとう。……沙夜は何でも出来るなぁ」
「まさか。全然だよ。…や、可成の癖っ毛だなぁ」
二人で協力しながら切っていると、鱗滝さんが戸棚からあの狐面を取り出した。厄徐の面というらしい。
炭治郎の面には日輪が描かれている。顔付きもどこか男らしい。
拙の面には三つ、右耳下に髪飾りの様に矢車菊が描かれていた。顔付きは凛々しくもあり、可愛らしくもあった。
そして夕餉は豪華だった。今日だけは厨に立つなと夕方に言われたのはこれが原因か。
ご馳走だから。バレたく無かったんだろう。
拙も炭治郎も沢山お代わりした。
夜。
寝ていると何かを感じて起きた。隣で寝ている炭治郎を起こさないよう外へ出た。
そこには錆兎が居た。
「錆兎?」
錆「寝ていたところ済まない。伝えたいことがあってな」
「伝えたいこと?」
錆「お前、来た時から俺たちに気付いていただろう?」
「うん。だって墓守だもの」
錆「そうか。あと一つだけ」
「?」
錆「絶対生きて戻れ。それだけだ」
「うん、分かった」
答えると錆兎は微笑んで消えていった。
「…絶対、生きて帰るよ。錆兎、真菰、皆」
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文学少女(プロフ) - ありがとうございます!まだまだ至らない所があるかと思いますが、これからも宜しく御願いします! (2019年6月9日 21時) (レス) id: 2d20336b29 (このIDを非表示/違反報告)
鮭本 - コメント失礼します。とても読みやすくて面白いです!無理しない程度に更新頑張ってください!応援してます!! (2019年6月9日 20時) (レス) id: 17f131f64f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:文学少女 | 作成日時:2019年6月4日 18時