妖捕物帳 弐 ひとりかくれんぼ ページ34
私は今、病室にお邪魔している。
左手には林檎、右手にはフルーツナイフ。
この病室は芥川兄妹が入院している。
『大事には至らず、良かったです。あ、林檎兎食べますか?銀さん』
私が聞くと銀さんははにかんでフォークを持った。シャクシャクと小気味良い音が響く。奥のベッドでは体操着(夏物)に身を包んだ芥川くんが小説を読んでいる。
開けた窓からは涼しい風が吹き込んでいる。私は思わず目を瞑る。
『(嗚呼、心地良いですね……)』
そう和んでいると、
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド←
『え?(汗)』
バンっ!!!
中『おっしゃ俺が一番だッこの青鯖ッ!!!』←
太『は?何行ってんの蛞蝓?私が先に部屋に入ったから!!!』←
唖然とする私と芥川兄妹。
どうやら彼等はこの病室まで徒競走の如く戦い乍ら来たらしい。
彼等の後ろで看護師さんや他の患者さん達が訝しげな顔をしている。私は慌てて彼等を部屋に押し込むと頭を下げ、ドアを閉めた。
『ちょっと貴方t『俺が早かった!調子乗ってんじゃねェぞクソが!』ねぇちょっt『其れは君だろう?寝言は寝て言い給え』……』←
私は胸の前で狐を指で形作る。その途端彼等は床にへばりつく様に倒れ込んだ。
中『なッ!?』
太『うわッ!?』
彼等は先程から黙っている私を恐る恐る見上げる。
『今貴方達に簡易的な管狐を憑依させました。……貴方達、お見舞いに来る礼儀はなって居ますが…その他の礼儀がなっていない様ですね……?』
中『や、八坂……すまな…ヒッ⁉』←
太『や、八坂さんごめんなさ…ふぁっ⁉』←
『な・ん・で・す・か?(黒笑)』
中/太『『イエ、ナンデモゴザイマセン』』←
『はぁ……暫くそうやって反省なさい』
私はそう言うと捕物帳に新しくひとりかくれんぼ の項目を書き出す。
芥『あの』
『?何ですか』
芥『僕と銀を救ってくれてその……感謝、する』
芥川くんは下に視線を泳がせ乍ら感謝の意を私に告げた。
『ありがとうございます。でも、芥川くんも頑張ってましたよ』
私がそう笑いかけると芥川くんは恥ずかしそうに顔を逸らした。
あの日の夜。
悪霊が羅生門に食らわれ、芥川くんが気絶したあと叔父さんがお祓いをし、病院に担ぎ込んだ。
芥川兄妹は霊障もなく、明日には退院できるらしい。
私は纏め終わった捕物帳を閉じると窓の外を眺める。
夏はすぐそこだ。
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大阪 - 更新ない…(泣) (2019年2月3日 14時) (レス) id: 513b666ef4 (このIDを非表示/違反報告)
りん - 更新きたー♪ (2018年7月25日 13時) (レス) id: a4c1fe7640 (このIDを非表示/違反報告)
かな - いいですね!それ! (2018年6月7日 21時) (レス) id: a4c1fe7640 (このIDを非表示/違反報告)
山吹桜 - 太宰さんでガシャドクロ、谷崎君でくねくね又はけてけてが見たいです。 (2018年6月3日 21時) (レス) id: 6d19b82d66 (このIDを非表示/違反報告)
文学少女(プロフ) - ありがとうございます!今は忙しくて更新出来ませんが落ち着いたら一気に書きます! (2018年5月18日 20時) (レス) id: 2d20336b29 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:文学少女 | 作成日時:2018年4月21日 16時